研究実績の概要 |
実トーリック多様体はトーリック多様体の実アナロジーであり、mod-2トーラス(2元からなる群の有限個の直積)の良い作用を持つ空間である。その構造はトーリック多様体と同様に、単体複体と特性行列と呼ばれる組み合わせ論的なデータで定まる。本年度は、単体複体上に組み合わせ論的に実現された有限群の作用を実トーリック多様体に持ち上げる構成を考察した。特にワイル群のコクセター複体への作用について具体的に、対応する実トーリック多様体のコホモロジー上に誘導される表現を計算した。副産物として、この対称性を用いることでコホモロジーの計算も簡単になる。このアイデアと計算機を援用することで、例外型リー群 E_7型, E_8型の二つの場合を除いて、ワイル群のコクセター複体に対応する実トーリック多様体のベッチ数を決定することができた。B型, C型ワイル群の場合のベッチ数は、オイラーのジグザグ数とその一般化との関連を見いだした。 また、旗多様体に関する研究も行った。旗多様体の束の塔で表される空間を考察し、その上へのトーラスの作用と、その作用に関する同変コホモロジーを決定した。これは、重要なトーリック多様体である、射影空間の束の塔で表される Bott tower の一般化となっている。Bott tower と同様に、iterated bundle としての構成と、リー群の部分群による商空間としての構成の同値性を示した。さらに、旗多様体のサイクルがベクトル束のゼロ切断として表される条件についても考察を行った。
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