研究課題/領域番号 |
18K03304
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鍛冶 静雄 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (00509656)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 実トーリック多様体 / ワイル群 / パーシステントホモロジー |
研究実績の概要 |
実トーリック多様体はトーリック多様体の実アナロジーであり、mod-2トーラス(2元からなる群の有限個の直積)の良い作用を持つ空間である。その構造はトー リック多様体と同様に、単体複体と特性行列と呼ばれる組み合わせ論的なデータで定まる。本研究では,実トーリック多様体のトポロジーを組み合わせ論との関係を通して調べている.前年度に発表した内容であるが,単体複体上に組み合わせ論的に実現された有限群の作用を実トーリック多様体に持ち上げる構成に関する論文が, The Korean Federation of Science and Technology Societies により 2019年の数学分野におけるベストペーパーに選出された.本年度は、ワイル群に付随する実トーリック多様体のコホモロジーの決定を目指した.コホモロジーが決定されていないのは例外型と呼ばれる有限個の場合だけであるので,計算機による計算を試みた.この本来の目的は達成できていないが,ある種のコホモロジーを高速に計算するソフトウェアを開発して公開した.このソフトウェアは weighted cubical complex のパーシステント・(コ)ホモロジーを計算することができ,数学分野以外でも医療や材料分野で応用利用されている.またトポロジーの応用に関して,「形状デザインの数理的方法の深化・発展とその社会実装」を受賞理由として第9回藤原洋数理科学賞奨励賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までは計画以上に進展していたが,今年度は共同研究者らと密な研究打ち合わせがしにくく,当初の計画に関わる研究に関しては進展が少なかった.一方で,個人で行える開発などに注力することとなった.
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今後の研究の推進方策 |
本課題の主テーマに関しては,韓国の研究者との共同で行ってきたものであるが,感染症の情勢は当分は往来して議論できる目処が立たない状態である.オンラインの環境も整ってはきたが,なかなか捗らないのが実情である.この様な状況を鑑みて,次年度以降はまずオンラインで作業のしやすいテーマを重点的に進める.特に,コホモロジーの高速計算ソフトウェアの開発に注力する.
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症のために全ての出張がキャンセルされ,旅費使用が無かった.次年度は出張の再開を願いつつ,その兆しがなければ,コホモロジー計算のための強力な計算機を購入することに研究費を充てる.
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