研究実績の概要 |
Gromovによって示されたWirtingerの不等式を用いることで, CAT(0)空間への写像に対する非線形スペクトルギャップがサイクルの場合には線形のスペクトルギャップと等しくなることがPansuによって証明されていた. この話をサイクル以外の有限グラフ, 特にコクセター群のケイリーグラフの場合に拡張できるかというのが, 本研究の問題意識であった. 本年度は, 昨年度までにできていた有限コクセター群に対するWirtingerの不等式の変種を用いて, 有限既約コクセター群のケイリーグラフの非線形スペクトルギャップの計算を行った. これらの計算は, Ivrissimtzis, Peyerimhoffによるランク3のコクセター群に対する重み付きラプラシアンのスペクトルギャップの計算や, Kassabovによる一般の有限既約コクセター群の重みのないラプラシアンのスペクトルギャップの計算の非線形版を含んでいる. この計算により, 非線形スペクトルギャップが線形の場合に一致するようなグラフのクラスが, すべての有限既約コクセター群のケイリーグラフを含んでいることがわかった.
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