研究実績の概要 |
4次元空間内の曲面結び目(埋め込まれた曲面)を表示するために鎌田氏によって、円板上のチャートと呼ばれるグラフが定義された。チャートを用いて曲面結び目を分類しようというのが、1つの目標である。このチャートには3種類の頂点があり、 black vertex と呼ばれる次数1の頂点、crossing と呼ばれる次数4の頂点、white vertex と呼ばれる次数6の頂点がある。crossing の数による研究とwhite vertex の数による研究の2種類を行っている。以前の研究により、crossing の数が2個の n-チャートについて、グラフの外形を決定した。 2018年度は、これらの分類の1歩として、crossing の数が2個の 4-チャートについて調べた。4-チャートとは辺のラベルが、1,2,3 のみしかないチャートである。この内、black vertex が8個のチャートが表わす曲面結び目の補空間の基本群を計算した。結果は以下のようになった。 p=2m-2 (偶数)の時、 <x,y | (xy)^m y=y(xy)^m, xyx=yxy^{-1}xy, yxy=xyx^{-1}yx>、p=2m-1 が(奇数)の時、 <x,y | (xy)^m x=y(xy)^m, xyx=yxy^{-1}xy, yxy=xyx^{-1}yx> である。ここで、p はある部分の辺の数である。 これより、Alexander 不変量というものが計算可能で、計算結果は自明な曲面結び目と同じとなった。別の手段であるが、この群の一部分が、整数全体の群 Z と同型でないことを示すことが出来た。自明な曲面結び目の補空間の基本群は Z であるので、一部分は自明な曲面結び目でない事が示された。この群はとても厄介なものであるが、このチャートの中に未知の曲面結び目がありそうなので、もっとこれらを調べたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、チャートを使って曲面結び目を調べる事である。 まずは、4-チャートを分類するために、2018年度に計算した基本群について更に調べる。これには、別の知識が必要と思われる。幾何以外の文献を調べたり、他の人に意見を求めていきたいと思う。積極的に研究集会に出て、この群を宣伝する。 もう1つの方向である white vertex の数の少ないチャートについても調べて行きたい。特に white vertex が7個以下のチャートは既に調べているので、今後の研究は white vertex が8個のチャートを調べたい。特に、2019年度は、チャートの型が (2,2,2,2) であるチャートを中心に調べる。調べるために、まずは特殊な形を含むチャートについて調べ、順番にその条件がない一般の (2,2,2,2) 型のチャートを調べる。分類に至れば、white vertex が8個のチャートから未知のチャートを発見出来るはずである。 crossing の数が3個のチャートについても、もっと詳しく調べて行きたい。目標としては、crossing の数が2個のチャートのように、ほぼグラフの外形を決定し、基本群等の不変量を計算可能に出来るようにしていく。
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