研究課題/領域番号 |
18K03310
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
佐藤 正寿 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (10632010)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホモロジーシリンダー / LMO関手 / Reidemeisterトーション |
研究実績の概要 |
曲面のホモロジーシリンダーのなすモノイドにおいて、Y降下列と呼ばれるフィルトレーションがあり、これについて研究を行った。ホモロジーシリンダーにはLMO関手と呼ばれる不変量が知られており、これはヤコビ図と呼ばれるグラフの形式和に値をもつ。また、有理係数の有限型不変量として普遍的であることが知られている。すでにLMO関手の像の中でグラフがループをもたない部分については、Johnson写像と等価な情報であることが知られているが、今年度はLMO関手の像の中でグラフのループの数が1である部分について研究を行い、次の結果を得た。 (1)曲面の基本群の群環の完備化に値をもつ非可換Reidemeister-Turaevトーションを構成し、それがホモロジーシリンダーの有限型不変量であることを示した。 (2)Reidemeister-Turaevトーションの主要項と、LMO関手の1ループ部分の主要項、および、榎本-佐藤traceとの関係を与えた。 (3)Reidemeister-Turaevトーションの値の変化について、グラフクラスパー手術に関する手術公式を、クラスパーがループをもつときに限り与えた。 (2)については、結び目のKontsevich不変量とAlexander多項式の関係の類似と考えられる。 上記の結果について、国内、国外の研究発表を計2件行った。この結果に関するプレプリントを作成中である。また、昨年度、ホモロジーシリンダーのY降下列の次数商のトーション部分を手術写像を精密化することによって調べ、既にプレプリントを作成していたが、この結果について雑誌への掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究内容について、ハンドル体写像類群に関する結果を1つ、ホモロジーシリンダーに関する結果2つが雑誌へ掲載済み、もしくは、掲載が決定している。特にそのうち2つの雑誌は評価の高い雑誌と言える。また、LMO関手の1ループ部分の意味付けを与えた、という意味で、研究は予定通り順調に進展していると言える。一方で、コロナ禍において研究発表や研究交流の機会がなかなか得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
LMO関手の2ループ部分を調べることと、構成したReidemeister-TuraevトーションとLMO関手の1ループ部分の一致について、主要項部分だけでなく、完全に一致するかを調べることを目指したい。 1つ目については結び目において知られている2ループ部分と同変Casson不変量の対応の類似を調べる必要がある。2つ目については、0ループ部分とJohnson写像の対応と同様に適切なMagnus展開をとり、曲面の基本群の群環の完備化のK1群と、曲面の1次ホモロジー群の完備テンソル代数を巡回群作用で割ったものとの適切な対応を与える必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、国内国外出張の機会が大きく減り、本来旅費として使用する予定であったものがなくなったため。次年度の旅費や資料の購入に使用することを予定している。
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