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2020 年度 実施状況報告書

葉層構造と群作用の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K03312
研究機関日本大学

研究代表者

松元 重則  日本大学, 理工学部, 名誉教授 (80060143)

研究分担者 平田 典子 (河野典子)  日本大学, 理工学部, 教授 (90215195)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードアノソフ写像 / 双曲群 / 不変生成 / 流れ
研究実績の概要

平面上の微分可能同相写像がアノソフ写像であるとは、互いに横断的な二つの不変葉層構造があり、完備なリーマン計量に関し双曲性を持つことを言う。双曲的線形写像はもちろんアノソフ写像であるが、この他に平行移動もまたアノソフ写像である (White)。つまり、平行移動 (x,y)->(x+1,y)に対し二つの葉層構造と適切な完備なリーマン計量を構成したのである。Mendesは固定点を持たないアノソフ写像の持つべき性質をいろいろ研究し、最終的に、それらはすべて平行移動と位相共役であろうと予想した。滑らかな流れの時間1写像については、Mendes予想が成立することが知られている(Groisman-Nitecki)。我々は、一般にはMendes予想は正しくないことを示す例を構成した。この例はもちろん流れの時間1写像でなく、従って、かなり複雑な力学的構造を持つものである。
群 G が不変生成であるとはその各々の要素に対しそれと共役な要素をひとつづつ選ぶとき、どんな選び方をしても選ばれた要素たちが G を生成することを言う。G の部分群 H が類充満とは G の各要素に対し、それと共役な要素がH 中に存在することを言う。群 G が不変生成であることと、類充満な部分群が G 以外に存在しないこととは同値である。これを用いて、有限群はすべて不変生成であることがわかる。更には仮想可解群は不変生成であることがわかる。反対に双曲群は不変生成ではないことが知られている。また位相空間の同相写像のうち、コンパクトな台を持つもののなす群も不変生成ではない。松田能文氏(青山学院大学)との共同研究において我々は区間[0,1]の PL (区分的線形)写像全体のなす群、およびそのいくつかの部分群は不変生成であることを示した。この中には Thompson 群 F も含まれる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平面上のアノソフ写像についてのMendes予想を解決した点、また区間[0,1]上の PL 写像のなす群、及びそのいくつかの部分群が不変生成であることを示した点は、一定の評価を得られる結果であると考える。一方、ここ1年以上、対面形式の研究集会は一切開かれておらず、同一分野の研究者との連携は甚だしく困難になっており、研究の進展にも支障をもたらしている。

今後の研究の推進方策

前述の成果すなわち平面上のアノソフ写像の構成及び、区間[0.1]のPL同相のつくる群の不変生成性の研究は継続していきたいと考えるが、それ以外に群の不変順序、及び不変円順序についての研究を行いたい。これらの全体は完全不連結コンパクト集合をなすが、群によっては孤立点を持つこともある。代表者が特に興味を持っているのは、この孤立点集合である。群の同型写像は不変(円)順序の集合上に同相写像として作用しており、従って孤立点集合にも作用する。この作用の商集合を決定するという問題がある。この問題は、ある群については簡単であるが、ある群については難しい。代表者が調べたいと思っている群は3糸の組みひも群 B_3 である。この群が孤立不変順序を持つことは以前から知られていたが、代表者は孤立不変順序は実はたくさんあり、上記商集合は無限集合であることを示した。しかし何らかの手法でこの集合を記述することはできる。今までに得られた記述は複雑すぎて成功したとはいいがたい。しかし別の何らかのうまい記述があるかもしれない。あるのならばぜひそれを見出したいと考えている。B_3の不変順序はB_3をその中心で割った群PSL(2,Z)の不変円順序と密接な関係があり、後者の方が調べやすい。
そこで、PSL(2,Z)の孤立円順序の商空間の記述の問題の研究を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

数学研究においては様々な研究者との交流は研究推進上極めて重要である。本研究課題のもともとの使用計画は旅費に大部分を充当することにあった。しかし本年度は対面形式の研究集会は一度も実施されなかった。また、他研究者の招へいもなかった。従って未使用の研究費が積み重なり、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] An example of planar Anosov diffeomorphisms without fixed points2021

    • 著者名/発表者名
      Shigenori Matsumoto
    • 雑誌名

      Ergodic Theory and Dynamical Systems

      巻: 41 ページ: 923-934

    • DOI

      10.1017/etds.2019

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Invariable generations of certain groups of piecewise linear homeomorphisms of the intervals2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshifumi Matsuda and Shigenori Matsumoto
    • 雑誌名

      Proceedings of the American Mathematical Society

      巻: 149 ページ: 1-11

    • DOI

      10.1090/proc/15277

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Can polylogarithms at algebraic points be linearly independent?2020

    • 著者名/発表者名
      Sinnou David, Noriko Hirata-Kohno and Makoto Kawashima
    • 雑誌名

      Moscow Journal of Combinatorics and Number Theory

      巻: 9 ページ: 389-406

    • DOI

      10.2140/moscow.2020.9.389

    • 査読あり
  • [学会発表] Algebraic approach towards analytic methods for the irrationality2020

    • 著者名/発表者名
      Sinnou David, Noriko Hirata-Kohno and Makoto Kawashima
    • 学会等名
      Analytic Number Theory and Related Topics (RIMS workshop), Kyoto University
    • 招待講演
  • [学会発表] Idetities for pi discovered by S. Ramanujan and visualization via Mathematica2020

    • 著者名/発表者名
      Noriko Hirata-Kohno et al.
    • 学会等名
      Study of Mathematical Softwear and Its Effective Use for Mathematics Education (RIMS workshop), Kyoto University
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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