研究実績の概要 |
加算群 G の左不変線形順序のなす空間をLO(G)と表し、左不変円順序のなす空間を CO(G)と表す。ともに完全不連結コンパクト空間である。前者は G の直線 R 上への作用と密接に関連している。後者は円周 S^1 上の作用との関連がある。これら空間の孤立点に相当する順序を孤立順序という。孤立順序は作用の剛性との関係から、力学系的に興味のある対象である。Dubrovina-Dubrovin は組みひも群 B_n 上に孤立線形順序を一つ構成した。我々は B_3 上には、このほかに一体どのくらい孤立線形順序があるのかという問題を考えた。この群 B_3をその中心で割った群は PSL(2,Z) であり、LO(B_3) と CO(PSL(2,Z)) は同型である。しかも後者の空間のほうが調べやすい。我々は群 PSL(2,Z) 上に Markov 系というものを定義し、その全体と CO(PSL(2,R)) の孤立点集合とが1対1に対応していることを見出した。更にMarkov 系の構成方法を考案した。これにより、原理的には CO(PSL(2,R)) の孤立点集合を記述することに成功した。しかしながらMarkov 系全体の数え上げは可能ではあるものの、優しい方法はなく、孤立点集合を決定したとは言い難い。今後の研究に俟たなければならないことである。現時点での成果としては「CO(PSL(2,R))の孤立点集合は、PSL(2,R) の同型写像の作用を除いて、無限個であり、それらは帰納的にすべて構成される」ということが示されたのである。前述のように、CO(PSL(2,R))と LO(B_3) とは同相であるから、まったく同じことが LO(B_3) についても成り立つ。
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