研究課題/領域番号 |
18K03316
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本多 尚文 北海道大学, 理学研究院, 教授 (00238817)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多重超局所化 / 解析的擬微分作用素 / Gevrey族 |
研究実績の概要 |
本研究は解析的擬微分作用素が対象である。解析的擬微分作用素は古典的には直積空間上の正則形式の層を直積空間内の対角集合に沿って超局所化することで得られる。特に,Gevreyクラスの擬微分作用素はGevrey増大度を持つ線形サイト上の正則関数の層をこのような幾何的状況で超局所化することにより得られる。 一方,研究代表者らは,幾人かの共同研究者との共同研究で,最近,この超局所化を複数の多様体に沿って同時に行うことが出来る多重超局所化の理論を構成することに成功した。この理論においても,超局所化作用素に相等する多重超局所作用素が期待される。さらに,このような多重超局所作用素に対しても本研究課題の対象である増大度付き擬微分作用素の対応物が期待される。以上から,このような多重超局所作用素も含めて統一的に研究課題が達成できるのが望ましいと考えるに至った。 このような目標のもとで,最も鍵となる点は線形サイト(もしくはsubanalytic サイト)上で通常の超局所化に現われる関手μHom を多重超局所化においても構成することである. 本年度はこのことを目標として研究を進めた。 その結果,複数の部分多様体が与えられたときに,それに対応する普遍部分多様体の族を構成することで多重超局所化においてもμHomに対応する関手μHom_χを構成することに成功した。また,普遍部分多様体の族の中の安定部分族の概念を導入した。この安定部分族を固定することで,所謂高次超局所化を自然の取り込むことができる。この構成法で,例えばWhitney正則関数やtemperateな正則関数の層を対象とすると,所謂小さな第2超局所化のこれらの増大度を持った対象物が得られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,諏訪によって精力的に研究されている\v{C}ech-Dolbeualtコホモロジーの理論を用いることにより,種々の増大度を持つ解析的擬微分作用素の核関数を関手的方法で構成すること,および,その基礎的性質を研究することが目標である。 一方,研究代表者らは,超局所化を複数の多様体に沿って同時に行うことが出来る多重超局所化の理論を構成することに成功した。これらの構成においては,どちらも局所コホモロジー群が本質的な役割を果しており,極めて有効に\v{C}ech-Dolbeualtコホモロジーの理論を用いることができる。従って,多重超局所作用素も含めて統一的に研究課題が達成できると期待される。統一的に遂行するという発想は,研究代表者にとって,本研究課題を遂行する上で極めて自然である。この発想は申請時の目標にはなかったが,研究遂行上の追加目標に加えるのが望ましいと考えられる。 この観点からすると,この追加された目標に対して,本年度は多重超局所化におけるμHomの構成という極めて重要な道具立ての構成に成功した訳であり,本研究課題はおおむねに進展していると評価して良いと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては以下の事柄を中心して解明していく予定である. まず,Linear site上のGevreyクラスの滑らかさを境界まで持つ正則関数の層およびGevrey族の増大度を境界で持つ層に超局所化関手を施すことで核関数を構成する。このとき,種々の消滅定理,特に楔の刃型の消滅定理が必要となるので,それを確立する。 つづいて,構成した核関数の\v{C}ech-Dolbeault表示を与え,核関数のコホモロジーの意味での積や共役の操作が,\v{C}ech-Dolbeault表示でどのような操作となるかを研究する。さらに,\v{C}ech-Dolbeault表示による核関数と増大度付き表象間の対応射を構成し,それが同型であることを示す。また,この射が両者の積や共役と両立することを,\v{C}ech-Dolbeaultコホモロジーの枠組みで示す。 以上を研究するために,多くの研究者と研究打ち合せを行う。また,海外の当該分野の専門家を招聘し研究を促進させる. また,関連する研究者を集めて研究集会を行い,互いの研究成果を共有することで研究目標の達成を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は2万円であり,本年度は適切に使用したと考えられる。次年度の旅費に組み込み適切に使用する。
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