Xを複素平面C上の有限葉解析的分岐被覆空間,fをX上定義され射影的代数的多様体Mに値を持つ正則写像とする.初めに正則写像fに対して第2主要定理型不等式を拡張し,除外関係式を与えた.この定理は東北数学雑誌(2012)において証明した結果の拡張・精密化である.この拡張された第2主要定理とクロフトン型公式を用いて,X上の定義された正則写像について,除外集合の構造を調べた.LをM上のアンプル直線バンドルとしたとき,|L|の部分一次系Λを考察し,fの除外因子の集合が高々可算個のM上の一次系の和集合として表されることを証明した. 次にM上に任意の効果的因子Dに対しDを除外因子として持つようなfの構成について研究を行った.特にX=CでMがn次元複素射影空間の場合を考察し,Dを除外因子として持つ正則曲線を構成した.このΛを限個の一次系の和集合に分解しその各々の部分一次系の上で異なる値を取るものが構成できるとを示した.この証明では上述の構造定理と位数零 の代数型関数論に関するValiron の結果,およびShiffmanが導入した指数関数型の有理型写像を用いた. またMがn次元複素射影空間の場合に上述の結果の精密化を行った.任意の効果的因子Dを含むような一次系Λを考察し,このΛを有限個の一次系の和集 合に分解しその各々の部分一次系の上である具体的な範囲にある異なる値を取るものが構成できることを示した.特に非負の任意の整数 ρを与えたときρを 位数に持つような正則曲線fが常に存在することを証明した.位数ρが正である場合は構成の方法から Λ が有限個の与えられた個数を持つ部分一次系への分解されることは比較的容易にわかる.fの位数がゼロの場合にも同様の分解が得られることは容易ではないが,このような分解が常に存在することをspread relation を用いて証明した.
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