研究実績の概要 |
本研究は, 代数解析学の理論と計算機代数の最先端の手法を組み合わせることで, 孤立および非孤立特異点の複素解析的諸性質を解析する革新的研究手法やアルゴリズムを研究・開発し, さらに構築した研究の手法を用いて特異点および特異点に付随して得られるホロノミーD-加群についてそれらの複素解析および代数解析的研究を行い, 当該分野における重要な未解決問題を解くことを目的としている. 研究初年度である本年度は, 研究代表者と共同研究者との研究連絡・討議を密に行うため申請した国内旅費を用いて出張し, 研究代表者と共同研究者が直接会って討議を重ねた. これにより研究用のアルゴリズムの考案, プログラムの試作や計算実験を行った. また, 本研究ではいくつかの研究課題を並行して研究することを計画しているが, 研究の申請時点で本年度の研究として予定していた孤立特異点に関する課題に関しては何れもほぼ順調に研究を進めることができた. 複素解析とアルゴリズムに関する研究については, スペインで開催された国際会議で研究成果の発表を行った. 対数的微分形式は, 本研究の主要な研究対象のひとつである対数的ベクトル場と深い関連があることが知られている. 対数的ベクトル場に関し本年度行った研究により, この対数的微分形式の理論で重要なtorsion微分形式に関し研究成果を得ることができた. この結果は研究を申請した時点では予想もしていなかった研究成果である. これらの研究成果の一部は, 学会, 研究集会等において口頭発表し当該分野の専門家との研究討議等を行った. 非孤立特異点の研究に関しては, 共同研究者と共に, D. Siersmaの非孤立特異点に付随するホロノミーD-加群の構造を決定した. また, 開発したアルゴリズムを用いてA. Zahariaの非孤立特異点に対するホロノミーD-加群の計算を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は孤立特異点の複素解析的な研究に関して, 計画していた以上に多くの研究成果を得ることができた. アルゴリズムの考案, プログラムの試作, 実装も順調にすすんでいる. また, 研究を申請した時点では予想もしていなかった新たな数学的な結果を得ることができた.非孤立特異点の代数解析的な研究に関しては, 研究に着手するための準備を整えることができた. これにより, 来年度以降の研究も順調に進めることが出来ると期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
孤立特異点の研究に関しては, 本年度の研究により得た成果に基づいて, 共同研究者, 当該分野の専門家と研究連絡をとることでより本質的で深い研究課題に挑む. また, 非孤立特異点の研究に関しては, 代数解析の観点から本格的な研究を行うことを計画している.
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