研究課題/領域番号 |
18K03321
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松井 宏樹 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (40345012)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 作用素環 / 群作用 / 極小力学系 |
研究実績の概要 |
作用素環への群作用の分類は作用素環論における最も重要な研究課題の一つである。フォンノイマン環への離散従順群の作用については、満足できる最終的な結果が既に前世紀に得られている。しかしC*環の場合には、様々な困難さのため未だ発展途上の段階にある。泉正己氏(京都大学)との共同研究によって、poly-Z群のKirchberg環への外部的な作用の完全分類に成功した。Kirchberg環は、K理論による分類が可能なC*環のなかでも、とりわけ性質の良いC*環のクラスである。poly-Z群とは、整数群Zによる有限回の半直積で記述できる群のことをいい、有限生成自由アーベル群や離散ハイゼンベルグ群を含んでいる。C*環と群の双方に対して強い仮定を課しているように見えるが、これまでの先行研究はすべて特定のC*環あるいは特定の群に限った研究であり、Kirchberg環やpoly-Z群といった広い枠組みで作用の分類が得られたのは初めてである。作用の分類は何らかの不変量によるものではなく、poly-Z群の分類空間かKirchberg環の自己同型群の分類空間への写像のホモトピー同値類との対応によって、分類が与えられる。今年度は本研究に関する3本目の論文を発表した。昨年度に発表した1つ目の論文では、Kirchberg環の自己同型群とあるユニタリー群とが弱ホモトピー同値になることを示した。昨年度に発表した2つ目の論文では、poly-Z群の作用に関するコサイクル消滅定理や、2つの作用がコサイクル共役になるための必要十分条件を、定式化した。今年度の論文では、既に得られていた成果をもとに、poly-Z群の作用の分類定理を最終的に完成させた。論文は現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
poly-Z群のKirchberg環への作用の分類が完成し、論文を発表できたことは、大きな進展と言える。一方で極小力学系の解析については、etale groupoidのホモロジー群に関する研究が少し進んだほか、フランスで行われた国際研究集会に参加して情報収集につとめたが、まとまった成果を得るまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、国内外の研究者と適切に連携を取りつつ、幅広い視点から情報を収集するようにつとめる。これまでの研究姿勢を維持し、多角的観点から本研究課題を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究機関における諸般の業務の影響もあり、海外への研究出張が予定通りに行えなかった。次年度は海外の研究者との交流に一層注力したい。
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