研究実績の概要 |
現在,東京大学の細井竜也氏と共著論文を準備中である.この内容について報告する. リゾヴィーらによって得られていた第6パンルヴェ方程式の解の級数表示は,級数の収束も分からないままであったが,2021年の細井氏の修士論文で,級数の(原点近傍における)収束が示された.細井氏の結果は,パンルヴェ方程式に限らず,函数の満たす斉次2次微分方程式の特異点における最低次の項の形がある条件を満たすという仮定の下に示されたものであった.この形の方程式を,特異点において H 型であると呼ぶことにする.我々は,t = 0, 1, 無限大,のみを特異点に持ち,そのいずれもが H 型である4階斉次2次微分方程式の形を(簡単なある仮定の下) 決定した.これは第6パンルヴェ方程式を含むものである. この結果はまた,2021年3月の熊本大学におけるアクセサリーパラメーター研究集会において,筆者によって報告された. 今回の結果については,新しい微分方程式のクラスを提案するものであり,今後の発展についても期待できるものであると思う.ここで提案された方程式が,パンルヴェ性などのよい性質を持つものなのかということには非常に興味がある.線型微分方程式の変形理論との関係も同様である.また,第6パンルヴェ方程式の新しい特徴づけにもなると考えられる.今後の拡張としては,特異点の数を増やした場合,特異点を合流した場合などの問題が考えられる.
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