研究課題/領域番号 |
18K03327
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鈴木 章斗 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (70585611)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 量子ウォーク / 弱収束定理 / 速度分布 / スペクトル理論 / 長距離型散乱理論 / ヨスト解 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)量子ウォークの弱収束定理を証明することおよび(2)弱収束定理によって与えられる量子ウォーカーの時間漸近的な速度分布の性質を調べることである。本年度は、(1)の弱収束定理を証明するために必要な量子ウォークに対する散乱理論の研究を行った。特に、未解決である長距離型の場合の散乱理論の構築に努めた。 量子ウォークの長距離型散乱理論では、1次元の特殊な場合には波動作用素が構成できることやムーレの評価を用いた特異連続スペクトルの非存在などが和田氏(八戸高専)によって示されていたが、一般的な場合には未解明であった。 そこで、和田氏と前田氏(千葉大学)との共同研究により、1次元の量子ウォークに関する長距離型の散乱理論を次の意味で完成させた。まず、一般的な長距離型の条件の下で、ヨスト解と呼ばれる一般化固有関数を構成した。次に、それを用いて、特異連続スペクトルの非存在と埋蔵固有値の非存在を示した。 以上の結果は、上で述べた和田氏の特殊な場合における散乱理論とは方法論の上で異なるが、ヨスト解が得られているために、波動作用素の構成より多くの質的情報が得られることを強調したい。すなわち、仮定においても結果においても上述の結果よりも一般的な理論となっている。この結果により、長距離型の弱収束定理を証明するための準備は完全に整った。また、(2)の速度分布を調べる上でもヨスト解が果たすであろう役割は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、最終年度に長距離型の散乱理論を構築する予定であったが、すでにそれが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られたヨスト解を用いて弱収束定理を完成させる。また、ヨスト解の性質を調べることで、速度分布の性質を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせや、研究発表のための旅費として、前倒し支払請求を行ったが、コロナの影響でそれらが中止となったため。次年度は、当初の計画通り、研究打ち合わせや、研究発表のための旅費として使用する予定である。
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