研究課題/領域番号 |
18K03334
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
増本 誠 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (50173761)
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研究分担者 |
柴 雅和 広島大学, 工学研究科, 名誉教授 (70025469)
中村 豪 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50319208)
増本 周平 香川高等専門学校, 一般教育科(詫間キャンパス), 助教 (30803861)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リーマン面 / 等角写像 / 擬等角写像 / 極値的長さ / タイヒミュラー空間 |
研究実績の概要 |
Rを正種数gの位相的に有限な開リーマン面とする。前年度に引き続き,Rを等角に埋め込ませる同種数の閉リーマン面全体のなす集合M(R)をタイヒミュラー空間論の枠組みで考察した。種数gのタイヒミュラー空間Tはmax{g,3g-3}次元の複素多様体であり,その元は種数gの閉リーマン面SとSからΣの上への向きを保つ同相写像ηとの組の同値類[S,η]である。ここで,種数gの向きづけられた閉曲面Σをあらかじめ固定している。RからΣの中への同相写像θを固定し,RからSの中への等角写像でηと合成した写像がθとホモトピックになるようなものが存在する[S,η]の全体がM(R)である。g=1のとき,柴はM(R)がタイヒミュラー距離に関する球または1点であることを示した。今年度,我々は,g>1 のとき,M(R)がTの閉球に同相であるか1点に退化するかのいずれかであることを示した。1点に退化するのはRが解析的に有限であるときかつそのときに限る。さらに,1点に退化しない場合,M(R)は外部球条件を満たすリプシッツ閉領域であることも示した。M(R)の境界が滑らかでないRの例も見出したので,M(R)の境界の滑らかさについてはこれ以上改良することは出来ないことが分かる。とくに,M(R)がタイヒミュラー距離に関して球とは限らないことも導かれる。 M(R)の形状に関する結果の証明には,1以上の実数Kに対し,RからSの中へのK-擬等角写像でηと合成した写像がθとホモトピックになるようなものが存在するTの元[S,η]の全体M(R,K)を考察することが重要である。K=1のとき,M(R,K)はM(R)に一致する。Ioffe による極値擬等角写像に関する定理と Gardiner によるT上の極値的長さ関数の挙動に関する定理がM(R,K)の形状を調べる上で重要な役割を果たす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M(R)の形状について,想定以上の結果が得られ,研究をさらに進める上で多くのヒントが得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進行方向には,Rの境界に関する制限を緩和することと,埋め込み先のリーマン面を閉リーマン面以外の場合に一般化することの2つが考えられる。とくに,後者は把手条件を一般化する上で重要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
6月に成果発表のため中国福建省泉州市で開催された国際研究集会に参加した際,滞在費を先方が負担してくれた。さらに,新型コロナウィルス流行のため3月に開催予定の日本数学会が中止になったため,多くの未使用額が生じてしまった。次年度は助成金を,リーマン面論に関する研究打合せ旅費,学会等で成果発表をするための旅費,年末に主宰する国際研究集会に中国から招聘する研究者3名の旅費,学術雑誌論文の閲覧料,数式処理プログラムの更新等に充てる予定である。
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