研究課題/領域番号 |
18K03336
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷口 説男 九州大学, 基幹教育院, 教授 (70155208)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サブラプラシアン / グルーシン作用素 / 偏マリアバン解析 |
研究実績の概要 |
1)拡散過程を生成するベクトル場のリー括弧積から作られるベクトル場が接空間を張るための括弧積の回数が基点に依存する,すなわちequi-regularではないサブラプラシアンの典型であるグルーシン作用素に対応する熱核の存在とその滑らかさを証明した.これは本研究の二つ目の課題として挙げていたものの解決である.一般の指数を持つグルーシン作用素に対する熱核の存在を,ウィナー空間上のWatanabeの超汎関数理論を偏H-微分に拡張・整備した偏マリアバン解析を開発することで証明した.さらに,ウィナー汎関数と超関数(この場合はディラック測度)との合成について,偏マリアバン解析を用いた部分積分の公式を利用して,ヘビサイド関数レベルでの熱核表示を確立し,それにより熱核のヘルダー連続性を証明した.この結果をまとめた論文は,Kyushu Journal of Mathematicsでの掲載が決定した. 2)サブリーマン多様体上のサブラプラシアンに付随する拡散過程を構成するために,サブリーマン多様体の水平方向から定まる直交枠束を利用して,リーマン多様体に関するElles-Elworthy-Malliavinの方法を拡張し,得られた拡散過程の回転不変性を見出した. 3)研究代表者が以前に開発した,2次ウィナー汎関数の特性関数およびその条件付き期待値を付随する常微分方程式(Jacobi方程式)の解を用いて具体的に表示する手法を適用し,ハイゼンベルグ群の一般化であるカルノー群(ユークリッド空間と歪対称行列群の直積空間)上のサブラプラシアンに付随する熱核に対し,双曲線関数の行列への拡張による具体的な表示を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)偏マリアバン解析を整備し,一般の指数を持つグルーシン作用素に対応する熱核を具体的に期待値積分で表示し,その表示を利用して熱核のヘルダー連続性を示すという,課題の一つを解決できた. 2)サブラプラシアンの具体例の一つであるカルノー群上のサブラプラシアンについて,確率解析的手法による詳細な解析を行った.
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今後の研究の推進方策 |
1)グルーシン作用素に付随する熱核の期待値積分を用いた具体表現を利用して,サブラプラシアンとして性質が変化するx=0という軸における熱核の短時間漸近挙動の様子を明らかにする. 2)equi-regularなサブリーマン多様体上のサブラプラシアンに付随する熱核の局所的な表示を,サブラプラシアンを決定する局所直交枠を用いた座標系を利用して具体的に与えることを,CR-多様体の場合を参考に,検証する.これにより,確率幾何学的な考察を展開する端緒とする. 3)4次ウィナー汎関数の特性関数を調べ,2次の指数を持つグルーシン作用素の解析に応用する.
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