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2021 年度 実施状況報告書

種々の変換を用いた超幾何微分方程式の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K03341
研究機関城西大学

研究代表者

大島 利雄  城西大学, 数理・データサイエンスセンター, 所長 (50011721)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード超幾何微分方程式 / 多変数超幾何関数 / 接続問題 / Stokes係数 / middle convolution
研究実績の概要

Riemann球面上の不分岐不確定特異点をもつリジッドな線形常微分方程式は,middle convolution と addition とを組み合わせた変換を何度か重ねることにより,互いに移り合うことが分かっていた.middle convolutionに対応するEuler-Louville積分の積分路を複素平面上で考えることにより,様々な漸近挙動を持った局所解が構成されることを示し,その解を解析接続していって,出発点と異なる,あるいは同じ特異点に近づくときの解の様子を知るために積分路をどのように取るとよいかを示した.さらに,その積分の値の漸近的振舞いから,不確定特異点をもつ常微分方程式の解の接続問題,すなわち,接続係数やStokes係数が確定特異点の場合の接続問題の場合と同様に帰納的に計算できることを示した.この結果を導くため,複素積分の意味づけを含めた正当性と諸性質とを一般的な定理として与え,証明を含めて論文にまとめた.
この定理によって,一般超幾何函数の合流方程式における接続係数やStokes係数を明示的に与えることができ,この方程式の既約性の必要十分条件と可約な場合の分解の様子も完全に分かった.結果が綺麗に述べられることから,一般の場合の結果も予想が立った.
多変数の超幾何微分方程式系では,様々な変数変換とaddition,さらにmiddle convolutionとそれの多変数への拡張に当たる新たな積分変換を導入した.方程式の変換が格段に増えることになり,それらの関係を含めて全貌は未知であるが,漸近展開を含むべき級数解の変換という観点で深めていくと,従来研究してきたKZ型方程式の枠に収まらない新たな分かり易い変換が導入でき,新しい観点から古典的なHornの多変数超幾何級数を含む広い範囲での解析についての見通しが立った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

rigidで不分岐な不確定特異点をもつ方程式の解の積分表示とそれを用いて大域的問題,すなわち,接続問題の解くための基本定理を論文としてまとめ,出版されることになった(AMS,Contemporary Mathematics に載る予定).これはスペインで開催予定であった国際シンポジウムがcovid-19のため現地開催されなくてオンラインで開催となったが,そこで発表した結果の一部を論文まとめたもの.
middle convolutionの多変数への拡張と考えられる自然で可逆な積分変換を導入した.
これらをもとにすると,一般の場合の具体的計算のための道具がたくさん手に入ったので,既存の古典的な例を吟味することにより,それらを拡張した多くの結果得られることが期待できる.

今後の研究の推進方策

一般超幾何微分方程式の合流の他,不分岐不確定をもつ多くの具体的な常微分方程式の接続問題で明示公式を計算すると共に,一般の場合の定式化を与える.
versal unfolding と組み合わせて不確定特異点の接続問題の理解を含め,さらに,確定特異点の場合も含めて多変数超幾何微分方程式の接続問題の重要例をいくつか計算して,よい定式化を探る.これについて,新しく導入した積分変換やそれによる微分方程式の変換との関係も調べる.
複素領域における非線形常微分方程式の数値解析において,Taylor法による高速高精度計算のライブラリの作成を進め,具体的な問題に適用できるようにする.
理論的部分については,熊本大の研究者との研究交流を行い,また金沢大での集会においては,数式処理プログラム上の問題点の議論を進めていく予定である.
2022年3月に計画していた熊本大,広島大や金沢大での研究集会がCOVID-19の影響で現地参加できなかった.今後は海外での国際研究集会無をめ可能な方法を模索しながら研究交流による情報収集や共同研究を続けていく計画である

次年度使用額が生じた理由

計画されていた国内のいくつかの研究集会や海外での研究集会がcovid-19の影響ですべてキャンセルになった.また,国内研究者との対面での直接の研究交流を行うこともできなかった.
2022年度は,2021年度に行った研究を飛躍的に発展させるため,国内の関連研究者との対面での情報交換や共同研究を行うことが具体化しつつあり,開催が期待される国内外の研究集会に参加する計画である.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Versal unfolding of irregular singularities of a linear differential equation on the Riemann sphere2021

    • 著者名/発表者名
      Toshio Oshima
    • 雑誌名

      Publ. RIMS Kyoto Uinv.

      巻: 57 ページ: 893-930

    • DOI

      10.4171/PRIMS/57-3-6

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Japanese Theoremについて2021

    • 著者名/発表者名
      大島利雄
    • 雑誌名

      城西大学数学科数学教育紀要

      巻: 3 ページ: 70-92

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 自然数の負の奇数ベキの和の収束とその誤差2021

    • 著者名/発表者名
      大島利雄
    • 雑誌名

      城西大学数学科数学教育紀要

      巻: 3 ページ: 93-97

    • 査読あり
  • [学会発表] Fractional analysis of linear differential equations on the Riemann sphere2022

    • 著者名/発表者名
      Toshio Oshima
    • 学会等名
      Web-seminar on Painleve Equations and related topics
  • [学会発表] 不確定特異点をもつ多項式係数常微分方程式の接続問題2022

    • 著者名/発表者名
      大島利雄
    • 学会等名
      超幾何方程式研究会 2022
  • [学会発表] 不確定特異点をもつ常微分方程式の解析2022

    • 著者名/発表者名
      大島利雄
    • 学会等名
      2021 年度表現論ワークショップ
  • [学会発表] リーマン球面上の線形微分方程式の接続問題2022

    • 著者名/発表者名
      大島利雄
    • 学会等名
      アクセサリー・パラメーター研究会
  • [学会発表] Towards analysis of rigid Pfaffian systems2021

    • 著者名/発表者名
      Toshio Oshima
    • 学会等名
      FASNET21
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 大島利雄 主要論文とプレプリント

    • URL

      https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~oshima/paper/index-j.html

  • [備考] 研究者総覧

    • URL

      http://researcher.josai.ac.jp/html/100000328_ja.html

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公開日: 2022-12-28  

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