研究課題/領域番号 |
18K03352
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
浦川 肇 東北大学, 情報科学研究科, 名誉教授 (50022679)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 調和写像 / 二重調和写像 / 等質空間 / 葉層構造 / 調和ベクトル場 / 二調和ベクトル場 / リーマン主束 / リーマン沈め込み |
研究実績の概要 |
調和写像の研究の深化について、調和写像の自然な拡張である二重調和写像の研究を中心に行った。その成果として、(1)リーマン多様体内の二重調和部分多様体の特徴を調べることができた。さらに、ターゲットの空間がユークリッド空間の場合には、二重調和写像を特徴付ける定理を得た。それだけでなく、もっと一般的な多重調和写像の特徴づけと分類定理を得ることができた。 (2)二つの葉層リーマン多様体の間の二重調和写像の特別なものとして、葉層横断的な二重調和写像の概念がある。二重調和な葉層調和写像の剛性定理を得ることができた。これらの研究は、調和写像理論という微分幾何学とトポロジーの葉層構造理論研究との間二つの理論とを結びつける理論として興味深い。 (3)一般に擬リーマン多様体上のベクトル場にも、調和ベクトル場や二重調和ベクトル場の概念が得られ、これらの特徴づけと分類を行うことができた。特に、2次元と3次元多様体の単位接束上の調和ベクトル場と二調和ベクトル場について完全な特徴づけを行った。 (4)コンパクト対称空間内の二重調和等質部分多様体について、超曲面の場合に完全な分類を行った。さらに余等質次元2の場合にも完全な分類を行うことができた。その結果、(a) 唯一つの調和でない二重調和軌道の場合、(b) 丁度二つの調和でない二重調和軌道の場合、(c) 二調和軌道は全て調和となる場合、それぞれについて、完全な分類結果を行った。 (5)一方、リーマン沈め込みの研究の場合の手始めとしては、リーマン主束と歪み直積の場合に、調和写像と二重調和写像の完全な特徴付け定理を得ることができた。これらの結果は、一般のリーマン沈め込みの場合にも、底空間が完備非正曲率多様体の場合に二重調和写像となるものを完全に特徴付ける結果をえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
調和写像と二重調和写像の研究について、長年研究を行ってきたことが、ようやく実を結び、様々な幾何学の分野との結びつきが得られることが分かってきた。国内外の共同研究者たちとの共同研究を通じて着実な成果を得ることができた。2018年6月にイタリアのカリアリで行われた国際研究会「2018年微分幾何学ワークショップ--調和写像、二調和写像、調和射と関連するトピックス」において、トップバッターの基調講演を行うことができ、大変光栄であった。更に、長年面倒を見てきたギリシャの若い共同研究者が、我々の研究成果の発表も、彼の発表により行うことができた。これらの研究成果によって、彼は若手の研究ポジションを得ることができた。 以上の本研究課題の進捗状況は、当初の計画以上に順調に進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては、対称空間内の調和や二調和部分多様体の分類の研究と並行して、調和や二調和リーマン沈め込みの研究についても、具体的な構成問題と分類問題を目指して、重点的に研究を推進する。また、リーマン多様体だけでなく、擬リーマン多様体や様層構造などの他の幾何学的な構造の研究についても、調和や二調和な構造の研究を続けて行きたい。特に、二調和リーマン沈め込みの研究は、詳細な分類理論の研究も可能と思われるので、これについては若い人々と共同で詳細な研究を行いたい。 最終的には、長年の未解決問題である B.Y. チェン予想「ユークリッド空間内の二調和部分多様体は極小部分多様体に限るであろう」について、最終的かつ決定的な解決を目指したい。これについては、小磯憲史大阪大学名誉教授との共同研究成果について、もう一度、拡張できそうな可能性を再点検しつつ、小磯教授と新たな共同研究を推進して行きたい。
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