研究実績の概要 |
本年度は、劣線形(sublinear)型の非線形項をもつ非線形楕円型境界値問題を研究した。そこでは次の2つの研究テーマに取り組んだ。
(1) 符号不定係数を伴うロジスティック非線形項を備えた境界条件を考える。ラプラス方程式をこの非線形境界条件のもとで考察し、ある臨界条件に近い状況にあるときパラメータに依存した正値解集合の振る舞いを特徴付ける。 (2) coast fishery harvesting 効果を持つ非線形境界条件のもとでロジスティック楕円型方程式を考察し、パラメータに依存した正値解集合の振る舞いを特徴付ける。特に正値解の存在と一意性および多重性を研究する。
(1)の研究については、G. F. Madeira, A. S. do Nascimento の一連の結果(2009, 2011, 2016)を補完する成果を得ることができた。さらに、ある臨界条件に近い場合に、パラメータに関する正値解の大域的一意性が成り立つことを示し、その場合において正値解集合をある意味完全に特徴付けた。符号不定係数を伴うロジスティック非線形項については従来の結果から正値解の多重性が期待されることに注意する.(2)の研究については,D. Grass, H. Uecker, T. Upmann (Optimal fishery with coastal catch, Nat. Resour. Model. 32 (2019), e12235, 32 pp) によってモデル化された、沿岸での漁業収穫を表す非線形境界条件を考察した。境界条件に備わる収穫効果パラメータ(harvesting effort)に依存した正値解集合の構造を調べて、得られた成果を現実の漁業収穫問題に実装した。
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