研究課題/領域番号 |
18K03360
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
藤田 安啓 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (10209067)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 病的函数 / Hamilton--Jacobi flow / 時間発展型の self-affine性 / 特異性の伝播 / 高木函数 |
研究実績の概要 |
今年度は、2本の論文が accept された。それらについて解説する。 最初の論文は、Acta Mathematica Hungarica から既に出版された。実数直線上で定義された連続な周期函数で、その2階差分がある評価をみたすもののクラスを考える。このクラスの函数は、一見すると微分不可能性と無関係に見えるが、実はこのクラスの函数はすべて実数直線上で至る所微分不可能であるという病的な性質を有している。このクラスの函数の代表的なものとして有名な高木函数がある。このクラスの函数は、その函数のグラフ上の点を頂点とする放物線がある不等式をみたすものとして特徴づけられる。この性質を使って、この函数のグラフ上の点を頂点とする放物線の族に対する最小値として定義される Hamilton-Jacobi flow を考えると、この flow は各時刻で区分的な2次函数となるという顕著な性質をもつ。これらのことについて詳しく調べたのがこの論文である。
2本目の論文は、Michigan Mathematical Journal に accept された。高木函数を初期値とする Hamilton-Jacobi flow を考えると、その flow が時間発展型の self-affine 性をもつという内容である。高木函数は函数としてself-affine 性を持ってはいるが、時間発展型の self-affine 性をもつ flow というのは、ほぼ初めての発見ではないかと考えている。
この他に、高木函数を初期値とする Hamilton-Jacobi flow における特異性の伝播を調べた論文を現在投稿中である。また、上記の内容に関連した口頭発表を3回行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「おおむね順調に進展している」とした理由は、上の「研究実績の概要」に書いた最初の論文(Acta Mathematica Hungarica)が出版できたことが大きい。この論文で論じた結果が、自分たちの進むべき一般論の概要であるといってもよく、これが出版できたことにより、その後は個別の面白い性質を見つけるという方向性も得た。実際に、それ以降2つの論文を仕上げることができた(一つは既に Accept され、もう一つは現在 referee による審査中)。
2年目の終了地点でここまで来られたことは、「おおむね順調に進展している」と表現しても過言ではないと思う。現在、更なるアイデアがいくつかあり、それの実現に全精力を傾けていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
上にも書いたが、2年目の終了地点では、「おおむね順調に進展している」と表現しても過言ではないと思う。これを維持して、最終年度を充実した年にしていく考えである。
しかし、コロナウイルスの影響で研究は現在もままならない状況が続いている。制限は多く研究も進めにくいが、数学という学問の特性上、自分でひたすら研究することも可能であると信じている。コロナウイルスの影響がなくなり元の生活に戻れる日が来ることに備えて、研究を継続したい。その日が来るまでは、skype や Zoom などで共同研究者たちと研究打ち合わせをするなどしてモチベーションが下がらないようにしたい。同時に、アイデア実現のための研究活動を絶えることなく続けていきたい。例えば, Zoom で開催されている Asia-Pacific Analysis and PDE seminar に過日(5/18)に参加してみたが、非常に有益なセミナーと思えるので今後もこれを活用していくなどして、研究の継続を図っていきたい。また規制がすべて緩和されれば、他の研究者を実際に訪問したり研究会に参加したりして、コロナウイルスの影響で出来なかったことを実施して研究の充実を図りたい。
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