研究実績の概要 |
本年度は、今回の研究課題の最大の目的である Hamilton--Jacobi flow の挙動から初期値の至る所微分不可能性を導くという逆問題を肯定的に解決することができた。この結果は以下の論文の欄に示すように既にオープンアクセスの論文として見ることができるようになっている。この意味において、今年度は、研究成果として極めて重要な進歩を遂げられたといっても過言ではないと思う。 さらに、この論文では最初に取る閉区間 [0,1] の分割として、以前の論文で考えていた等分割のものだけでなく、より一般的な分割まで許容することができている。これにより、Hamilton--Jacobi 方程式の解としての Hamilton--Jacobi flow における正則効果はかなり「緩い」ことが示唆される。なぜなら、この正則効果が強ければ、初期値の至る所微分不可能性などの悪い性質も一気に解消されて、我々は Hamilton--Jacobi flow から初期値の至る所微分不可能性を見出すことなどできなくなるからである。 このように、相当良い結果を導くことができて、この年度の研究は成功ということができると思う。また、今年度は上記の論文の共著者でもある山口範和氏に研究分担者になってもらい,解の挙動の数値シュミーションやアニメーションについて更なる精度の高いものを構成してもらった。これらが上記論文の作成においておおいに役に立った。また、山口氏との討論や校正時の共同作業は上記論文を良いものにするにあたり欠かせないものであった。
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