申請者の研究課題の目的は、Feynman経路積分の数学的研究と、その量子電磁力学・量子情報理論への応用である。令和4年度の研究において、以下の研究成果 を得た。 (1)量子計算など、量子情報の読み取りは量子測定(観測)によって行われる。この理由で、量子測定理論は量子情報理論の中でも重要である。特に連続測定 理論は、測定が有限時間続くという意味で現実的なものであり、工学に応用される。令和4年度において、粒子の位置の量子連続測定理論について以下の研究成 果を得た。(a) 粒子の位置の連続的な量子測定を、制限Feynman経路を用いて数学的に厳密に定式化するのに成功した(Osaka J. Math.2023)。(b) Menskyは、 Feynmanの公理から制限経路積分を提案したが、その導入方法は現象論的であり論理的でなかった。本研究では、Neumannの射影公理とFeynmanの公理の各々か ら、自然に制限Feynman経路積分が導出されることを示した。次にこの結果を用いて、2重スリット実験とAharonov-Bohm効果に関する実験に関する理論の正確な 定式化を行った(Annales Henri Poincareに投稿中)。 (2)従来、位相空間Feynman経路積分は、配位空間Feynman経路積分の結果を用いて研究がなされてきた。本研究の目的の1つは、より一般的な問題の解決のた めに、位相空間Feynman経路積分を直接的に研究する方法を見つけることであった。本研究ではこの方法を見出し、この方法を用いてスピンー軌道相互作用項を 持つPauli方程式に対するFeynman経路積分を定式化を行った。現在論文の作成準備中である。
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