研究課題/領域番号 |
18K03373
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関 行宏 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任研究員 (50728970)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 特異性形成 / 臨界指数 / 藤田方程式 / 調和写像流方程式 / Type II |
研究実績の概要 |
本研究課題は様々な非線形放物型方程式で現れる非自己相似的な特異性の形成(Type II 爆発と呼ぶ)に関してその諸性質を明らかにすることを目的としている。本年度は特に球対称解を主な対象とし、藤田方程式と呼ばれるべき乗型非線形項を持つ半線形熱方程式に対する解の爆発構造を研究した。その非線形性を示す重要な数にJoseph--Lundgren の臨界指数がある。これは非線形楕円型方程式に対する分岐問題等でも現れ, それを境として解の構造が著しく変化する。臨界指数に等しいべきを扱おうとすると様々な情報が退化するため、多くの重要な問題が未解決である。その一つがType II 爆発解が存在するかを問うものである。優臨界では実際に Type II 爆発する解が存在し、劣臨界では僅かな仮定の下で Type II 爆発する球対称解が存在しないことが10年程前の時点で知られていた。その意味でJoseph--Lundgren の臨界指数が状況を二分していることが分かるが、臨界状況で Type II 爆発が起きるかどうかは全く知られていなかった。本課題では申請時の予備研究を踏まえてまずこの問題について取り組み、肯定的な結果を得た。これはJoseph--Lundgren の臨界指数における Type II 爆発に関する初めての結果になっており、専門学術誌 Journal of Functional Analysis に掲載された。 また、その研究で得た技術を駆使して調和写像流方程式に対する Type II 爆発解の構成に取り組み、申請時における予想通りの結果を得た。さらにドイツ出張を通じて共同研究者と精密化について検討を重ねた。その結果、解の正則性評価を積み上げて行くことでエネルギー密度関数に対する特異点近傍における精密な局所評価を得た。その成果をまとめた論文は現在学術雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では調和写像流方程式の Type II 爆発解の構成においては本来の方程式から適当な従属変数の変換によって導かれれるスカラー値の放物型方程式を考察し、典型的な解の 爆発オーダーの決定と特異点近傍における各点評価を目標としていたが、それに加えて解の微分に関する各点評価をも得ることができた。これを元の変数に戻すことによって、調和写像流の定義式そのものに現れる Dirichlet エネルギー汎関数の被積分関数、すなわちエネルギー密度関数に関して、見易い評価を得た。特に特異点近傍とそれ以外の点における主要項をノルムのような大域的記法に頼らず記述することが出来たことは放物型方程式の特性を十分に反映させた結果となっている。これは当初の計画においては予想していなかった成果である。
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今後の研究の推進方策 |
藤田方程式に対して本年度の課題研究で得た技術はより広範囲の問題に対して適用可能であることが期待できる。その汎用性を広く示すためには、同時に他の非線形偏微分方程式に対しても研究を行い、従来の研究では得られなかった成果を示して行く必要がある。藤田方程式ではべき乗の項以外の部分は素直な形をしているため非線形性の度合いに純粋に注目することができるが、より複雑な方程式ではその他の数学的構造にも注意を払わなくてはならない。この点を踏まえ、翌年度以降の研究を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費にかかる費用が予定より多くかかったため、予定していた図書購入ための金額が不足した。翌年度分と合わせて必要となる図書を購入する。
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