研究実績の概要 |
Sobolev不等式の最良定数を定める体積制限条件付き極値問題を考える.この条件付き極値問題に対する勾配流をp-Sobolev流と呼ぶ.これは, porous medium型作用素とp-Laplace型作用素の混合した二重非線形退化特異放物型2階偏微分方程式の解として定まる. p=2の場合には, pソボレフ熱流は山辺熱流と呼ばれ, 山辺問題と呼ばれるスカラー曲率の等角(共形)変形に関する変分問題の勾配流である.令和1年度は以下の結果を得た: p-Sobolev流に対する零ディルクレ境界値初期値問題の弱解の先験的正則性評価を研究した.内部正値,有界かつSobolev空間に属する初期値に対して,弱解の比較定理,正値性(弱ハルナック不等式),有界性および正則性(連続性, 連続微分可能性)を証明した(雑誌論文2つ目); 本研究と関連するp-Laplace作用素を伴う幾何学的方程式について以下の結果を得た: 滑らかなコンパクト多様体から滑らかなコンパクト多様体へのp調和写像熱流の初期値問題の部分的正則な弱解の時間大域存在(雑誌論文1つ目); また,関連する関数空間の臨界の共役性を意味するFefferman-Steinの不等式を応用して, 流体力学の基礎方程式の弱解の正則性を研究した(雑誌論文3つ目). 令和1年6/2-6/16の期間, Mingione教授(Parma大学,数学教授)を当科研費により東京,京都に招聘した.当科研費の研究課題を中心に関連する退化特異楕円型,放物型方程式の解の正則性特異性について広く議論し研究情報の交換を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題である,pソボレフ熱流の弱解に対する先験的正則性評価を構築した(雑誌論文2つ目). p-Sobolev流の弱解に対する先験的正則性評価にもとづき, p-Sobolev流に対する零ディルクレ境界値初期値問題について, 内部正値,有界かつSobolev空間に属する初期値に対して, 正則(空間について連続微分可能な)弱解の大域存在を証明した(論文を投稿中).この大域存在の証明では, 適当なスケール変換を見出して,それを対応する主要部のみからなる二重非線形放物型方程式に適用し,pソボレフ熱流の弱解を構成し,その解を先験的正値性評価によって時間大域的に延長している.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和1年度6/2から6/16まで, 研究打ち合わせおよび最新の研究情報交換のため, 東京および京都に外国人研究者を招聘することになり,当初予定していた旅費よりも多くの旅費が必要となった. このため平成30年度10月に申請して前倒し使用を行ったが,結局,他大学科研費からの旅費の援助があり,残額が生じた. (使用計画) 次年度令和2年度も引き続き当科研費研究課題に関する研究活動を行う.前年度残額を込めて有効に使用できる計画である.
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