研究課題/領域番号 |
18K03375
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
三沢 正史 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (40242672)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | pソボレフ熱流 / 二重非線形退化特異方程式 / ソボレフ不等式 / ポアンカレ不等式 / 最良定数 / 非線形固有値問題 / 非線形スケール変換 |
研究実績の概要 |
ソボレフ不等式の最良定数を定める体積制限条件付き極値問題を考える.体積制限によるラグランジェ乗数を固有値とする非線形楕円型固有値問題である.この条件付き極値問題に対する勾配流,pソボレフ熱流,は,多孔媒質型作用素とpラプラス型作用素の混合した二重非線形退化特異放物型2階偏微分方程式の解として定まる.p=2の場合には,pソボレフ熱流は山辺熱流と呼ばれ,山辺問題と呼ばれるスカラー曲率の等角(共形)変形に関する変分問題の勾配流である.令和2年度は以下の結果を得た: pソボレフ熱流に対する零ディルクレ境界値初期値問題の解の時間大域存在を研究した.内部正値,有界かつソボレフ空間に属する初期値に対して,弱解が時間大域的に存在し,弱解は内部正値,有界,解および空間一階導関数が時空連続であることを証明した(雑誌論文2つ目).前年度に証明した先験的正則性評価,弱解の比較定理,正値性(弱ハルナック不等式),有界性および正則性(連続性, 連続微分可能性)評価を適用した; 本研究と関連するp-Laplace時間発展方程式に関する結果を得た: 後退差分近似方程式(時間離散モース流という)の一様正則性評価,空間一階導関数の有界性が近似に対して一様に成立する,ことを証明した(雑誌論文1つ目); p-Laplace作用素に関連する幾何学的方程式について結果を得た:ユークリッド空間の有界領域から滑らかなコンパクト多様体へのp調和型退化特異楕円型方程式の弱解の連続性を証明した(雑誌論文3つ目); また,関数空間の臨界の共役性を意味するFefferman-Steinの不等式を応用して, 圧縮性ナビエ・ストークス方程式の線形化方程式の弱解の正則性を研究した(雑誌論文4つ目).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題であるpソボレフ熱流の弱解の時間大域存在とその正則性を証明することができた(雑誌論文2つ目). 前年度に得たpソボレフ熱流の弱解に対する先験的正則性評価を適用して達成した. pソボレフ熱流に対する零ディルクレ境界値初期値問題について, 内部正値,有界かつSobolev空間に属する初期値に対して, 正則(空間について連続微分可能な)弱解の大域存在を証明した. 大域存在の証明では, 主要部のみからなる二重非線形放物型方程式の大域的弱解を構成し, この弱解が体積等式およびエネルギー不等式を満たすことを証明した. 体積等式を使って, この解を適当なスケール変換によってpソボレフ熱流の弱解に変換した. このスケール変換はpソボレフ熱流を含む二重非線形作用素に適用できる非線形変換である. 熱作用素を伴う冪非線形項付き方程式に対する従来の自己相似変換を含む, 二重非線形退化特異作用素に対する新しい変換である.
|
今後の研究の推進方策 |
解の局所有界性評価を構成して, pソボレフ熱流の正則な弱解の時間無限大の体積集中現象を証明する. pソボレフ熱流の二重非線形性を一般化して, 遅い拡散および速い拡散, そしてソボレフ劣臨界, 臨界および優臨界の場合に, pソボレフ熱流の時間大域弱解とその正則性を研究する. 符号変化する初期値も扱い, 符号変化する弱解の大域存在とその正則性を研究する. これら研究とその結果をもとに, 二重非線形作用素の弱解の存在と正則性の理論を整備する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)昨年度令和2年度は, コロナ感染症の流行のため, 国内外での共同研究, 研究セミナーの実施および研究集会への参加のための出張を実施することができなかった. そのために旅費はほとんど未使用のままとなった. しかしながら, 残った研究費を有効に活用するために, 補助期間の延長を申請し、今年度承認された. (今年度の使用計画) 今年度令和3年度についても, 5月6日現在, 感染症の流行が収まらず, したがって当面, 共同研究, 研究セミナーの実施および研究集会への参加のために国内外の出張を実施することが困難である. 共同研究, 研究セミナーを共同研究者と効果的に行うために, 遠隔機器を充実させる予定である. 遠隔での情報交換および情報共有のためMacのiPadおよびデータ整理のためMacノート, また, Microsoftのデータ処理ソフトをスムーズに使用するためMicrosoftのノートパソコン, データおよび資料の出力のためカラー印刷を備えたプリンターを購入する. また, 遠隔での研究打ち合わせおよび研究セミナーをスムーズに行うためにビデオ機器を購入する予定である. 通常通り, 研究に関わる文献を購入する. 論文の英語校正のため校正作業を業者に依頼することもあり得る. また, 論文の公表を効果的にするために国際雑誌のオープンアクセスも利用する.
|