研究実績の概要 |
ソボレフ不等式の最良定数を定める体積制限条件付き極値問題を考える.体積制限によるラグランジェ乗数を固有値とする非線形楕円型固有値問題である.この条件付き極値問題に対する勾配流,pソボレフ熱流,は,多孔媒質型作用素とpラプラス型作用素の混合した二重非線形退化特異放物型2階偏微分方程式の解として定まる. p=2の場合には, pソボレフ熱流は山辺熱流と呼ばれ, リーマン多様体の定スカラー曲率への等角(共形)変形の存在を問う山辺問題の勾配流である. 令和3年度は以下の結果を得た: pソボレフ熱流に対する零ディルクレ境界値初期値問題の解の時間大域存在を研究した.内部正値,有界かつソボレフ空間に属する初期値に対して,弱解が時間大域的に存在し,弱解は内部正値,有界,解および空間一階導関数が時空連続であることを証明した(雑誌論文4つ目).前年度に証明した先験的正則性評価,弱解の比較定理,正値性(弱ハルナック不等式),有界性および正則性(連続性, 連続微分可能性)評価を適用した; 本研究と関連するp-Laplace時間発展方程式に関する結果を得た: 後退差分近似方程式(時間離散モース流という)の一様正則性評価,空間一階導関数の有界性が近似に対して一様に成立する,ことを証明した(雑誌論文3つ目); p-Laplace作用素に関連する幾何学的方程式について結果を得た:ユークリッド空間の有界領域から滑らかなコンパクト多様体へのp調和型退化特異楕円型方程式の弱解の連続性を証明した(雑誌論文2つ目); また,関数空間の臨界の共役性を意味するFefferman-Steinの不等式を応用して, 圧縮性ナビエ・ストークスの線形化方程式の弱解の正則性を証明した(雑誌論文5つ目). 以上の結果については,昨年度令和2年度の研究実施状況報告書にてアナウンスしていた.
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