研究実績の概要 |
アクセサリーパラメーターをもつ微分方程式の典型例としてホインの微分方程式があり、これのq差分化としてqホイン方程式が知られている。今年度はおもにqホイン方程式について結果が得られた。 qホイン方程式はHahnにより1971年の論文で導入されたがしばらくは注目されず、2017年に出版された論文「Degenerations of Ruijsenaars-van Diejen operator and q-Painleve equations」において報告者によって再発見された。この論文ではqホイン方程式が2通りの方法で導出されたが、その1つはRuijsenaars-van Diejen 作用素から4回の退化によって導出するものである。 今年度に出版された論文「On q-deformations of Heun equation」では、この退化において2回退化のものと3回退化のものについて、確定特異点や見かけの特異点の理論を差分化したものからの特徴付けを行った。4回退化のqホイン方程式においては、q→1の極限で4点{0,1,t,∞}に確定特異点をもつフックス型微分方程式、すなわち標準形でのホインの微分方程式が得られるが、3回退化においてはq→1の極限で無限遠点が特異点でない4点{0,t_1,t_2,t_3}に確定特異点をもつフックス型微分方程式が現れること、および2回退化においてはq→1の極限で原点および無限遠点が特異点でない4点{t_1,t_2,t_3,t_4}に確定特異点をもつフックス型微分方程式が現れることがわかった。q差分方程式においては微分方程式の場合とは違って原点および無限遠点が特別な特異点となると考えられるが、このことが退化の構造と整合的であることがわかった。他に、博士前期課程を修了した小嶋健太郎氏と佐藤司氏との共同研究とそれを引き継いだ研究が進展した。
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