研究課題/領域番号 |
18K03381
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山浦 義彦 日本大学, 文理学部, 教授 (90255597)
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研究分担者 |
三村 与士文 日本大学, 文理学部, 助教 (30646427)
SVADLENKA KAREL 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60572188)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Curves of maximal slope / p-Laplacian / Fractional p-Laplacian / Moser iteration |
研究実績の概要 |
本申請における「関数空間上の汎関数に対するエネルギー最大勾配曲線」の研究に於いては, 二つの研究手法を掲げている. 一方は時間変数を差分化することにより定常変分法の手法に訴え, 時間離散化パラメータの極限をとることにより, 勾配流を得る方法である. そして, 他方はエネルギー汎関数に対して, 局所閉球内での最小化関数を順次見つけて折れ線として勾配曲線を求め, 局所閉球の半径の 0 の極限をとることにより, 勾配曲線を求めようという方法である. 今年度の研究により, この両者の方法それぞれに対して論文投稿という形で成果をあげることができた. 前者については, p-Laplacian タイプ (p>2) の放物型方程式系に対する時間方向にヘルダー連続, 空間方向にリプシッツ連続な正則性を有する弱解の構成である. 論文では, これを正則性解析ではよく知られている, Moser iteration argument を離散的に適用し, 離散解の段階で時間方向の一様ヘルダー連続性と空間方向の一様リプシッツ連続性を導いた. その段階で, 一つの大きな困難は, p が2より大きいという条件により, 主要項の p-Laplacian に degenerate (退化)が起こる点である. この論文ではこの難点を degenerate 部を限りなく小さい正数を加え, 限りなく小さい正数は最終的に 0 に近づけることにより, 汎関数収束の理論により目的の汎関数の考察が可能になった. 後者については, 準線形熱型方程式に対しての考察がなされた. この方程式は, この手法を確立したイタリア学派の一人によって既に過去に研究された対象であるが, 今回まとめることができた論文では, 別の方法での考察を行った. それにより, 古典的に知られている Weissler 指数の変分的意味付けに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は, 上述の研究実績の概要で述べた研究に加えて, 分数べき p-Laplacian 放物型方程式への応用という研究に着手することができた. 本申請のエネルギー最大勾配曲線の研究における時間差分化法による研究のと位置付けることができる. 分数べきソボレフ関数を研究で扱うことは全くのはじめてであったが, 最近ではその物理や工学への応用に於いて大変注目されているため, 本申請に基づく研究に新たな研究対象として取り入れることを計画をし, 現在進行中である. 現在取り組んでいるのは, 時間差分項が通常の時間微分の一般化された形をした, Fractional p-Dirichlet 汎関数に対する Frechet 微分によって得られる勾配に対するフローの研究である. この研究は, 熊本大学, 三沢正史教授, 中村謙太氏と共に進められており, 現在投稿に向けた最終段階に入っている. 最も難しい点は, Fractional Sobolev 関数の「1階微分」が特異重積分によって定義される点である. 時間変数の差分化によって考えられる楕円型偏微分方程式の弱解は Brower の不動点定理によって保証される. これに基づいた Galerkin 法により弱解を構成する. 極限移行については, 弱方程式を基にしたエネルギー一様評価に基づいた解析がなされる.
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況で記述した通り, 本申請による研究を進める過程に於いて, これまで全く触れてこなかった「分数べきソボレフ関数空間」を定義域とする汎関数の扱いを通じて, 分数べき p-Laplacian の研究に着手した. 現在作成中の共著論文は, まもなく投稿予定であり, 最後の詳細な検証の段階に入っている. また, この論文作成をきっかけに, 分数べきソボレフ関数の基本的な性質や基本不等式, さらには取り扱いを実際に習得することができたので, 今年度はこの議論を, Curves of Maximal slope (最大勾配流)の構成に適用する計画である. すなわち, 分数べきソボレフ関数の1階微分によって記述される Dirichlet 汎関数に対する最大勾配流の構成を目指すという研究方針である. そのためには, まずエネルギー汎関数の設定から着手しなければならない. 現時点では, 考える距離は2乗積分ノルムとし, 劣微分による解析を目指す計画である. 本申請では, 時間変数の離散化と最大勾配流を統合的に研究することを目指し, それぞれに対して個々の具体的な問題に取り組むことを目標としていたため, 残りの1年間を分数べきソボレフ関数による解析に費やし, 可能な限り理解と研究成果をあげたい計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は, 計画していたイギリスランカスターでの研究集会が開催されず, 執行できずに終わりました. また, 研究者を招聘することも困難であり, 研究打ち合わせはすべて遠隔ソフトを用いて行いました. このため, 国内, 国外出張, および, 人件費謝金などの支出がことごとく計画通り遂行することができませんでした. 出張や研究会出席に関しては, 現時点では明確なことは述べることができませんが, 可能になり次第, 計画し支出をさせていただきたいと考えております.
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