研究課題/領域番号 |
18K03382
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大谷 光春 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (30119656)
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研究分担者 |
内田 俊 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (60777986) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミトコンドリア膨潤モデル / 複素ギンツブルグ・ランダウ方程式 / 集合値項を持つ偏微分方程式 / 強消散項を持つ波動方程式 |
研究実績の概要 |
研究課題に関して以下の成果が得られた. (1) ミトコンドリア膨潤モデル:従来のモデルは,カルシウムイオンの拡散が線形(ラプラス)作用素で支配される半線形モデルであったが,細胞内の拡散現象をより忠実に表現するモデルとして拡散現象がポーラスミディアム型作用素に支配される準線形モデルを提案し,解の存在と一意性及び解の長時間漸近挙動に関する解析を行った.解の長時間挙動の解析の為に半線形モデルで課されていた,方程式に含まれる非線形効果を記述する関数に対する様々な構造条件のほとんどを仮定することなく,従来の結果と同様の解の漸近挙動が方程式の準線形性から導かれることが判明した. (2) 複素ギンツブルグ - ランダウ方程式:消散系の方程式に対する時間周期問題を有界領域に対して解析した.パラメーターに対する初期値境界値問題と全く同じ条件の下で,任意の大きさの外力に対して時間周期解を構成した. (3) 集合値項をもつ放物型方程式:多価作用素項が usc(上半連続)な場合に対する,初期値境界値問題で得られた予備的結果を完成させ,さらに,lsc(下半連続)な場合に対する Fryszkowski’s selection theorem の適用することで,古典的な半線形拡散方程式に対する結果の一般化に成功した.即ち,「劣ソボレフ臨界増大度の非消散効果を持つ非線形項を有する半線形拡散方程式がH1に属する初期値に対して時間局所解を許す」という事実を非線形項が usc, lsc な多価作用素項を持つ場合に拡張した. (4) 強消散項を有する波動方程式:解の時間微分にラプラス作用素のα次の分数冪を作用させた強消散項を有する波動方程式の放物型性を解析した.(i)α=1/2 の時:解は実解析的になる.(ii) 1<α<1/2, 1/2<α<1 の時:解は実解析的ではないがジュブレイクラスに属することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に掲げた,具体的研究計画に対しておおむね計画に沿った成果が得られている.さらに,次年度以降の目標に対する予備的な研究成果も十分に得られ ている.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 集合値項をもつ放物型方程式:半線形方程式に対して得られた結果を,(主要項のラプラシアンを p-ラプラシアンに置き換えた)準線形方程式に対して拡張する.この際, p-プラシアンに対する楕円型評価の欠如のため,すべての劣ソボレフ臨界増大度の非線形項に対して,半線形方程式で得られたような強解を構成することは困難であり,弱解の構成が必要となる. (2) ミトコンドリア膨潤モデル:拡散現象が非ニュートン流に従う,準線形問題に対する他のモデルの構築とその解析に着手する. (3) 双曲型性と放物型性との間に横たわる階層構造の解明:強消散項を持つ波動方程式の放物型性に関する予備的知見を更に進展させ,発展方程式論の抽象論的側面から実解析性やジュブレークラスの平滑化現象のための(必要)十分条件を探る. (4) 複素ギンツブルグ - ランダウ方程式:非線形項がエネルギー増大に作用する,非消散系の方程式に対する初期値境界値問題を,まず有界領域に対して解析する.この際,非線形熱方程式のアナロジーから,非線形項に劣ソボレフ臨界増大度を仮定し,H1空間に属する初期値に対して,時間局所解の存在と一意性を示し,初期値を小さく絞った時の時間大域解の存在を構成することを目指す.さらに,これらの結果を非有界領域を含む一般領域にまで拡張する.
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次年度使用額が生じた理由 |
必要とした消耗品の購入額が,予定した金額に満たなかったため. 次年度に消耗品用予算として繰り越す.
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