研究課題/領域番号 |
18K03383
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
渡辺 達也 京都産業大学, 理学部, 教授 (60549749)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非線形解析 / 変分問題 / 楕円型偏微分方程式 / 安定性解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、プラズマ物理学においてsuperfluid film方程式として導出される準線形シュレディンガー方程式の定常問題の解構造(一意性・多重性・漸近的プロファイルなど)を解析した。今年度の具体的な研究実績は以下の通りである。1つ目の結果は、非線形項がソボレフ臨界指数の場合の解の漸近挙動を考察したものである。本研究内容は足達慎二氏・柴田将敬氏との共同研究として学術雑誌「Calculus of Variations and PDEs」に掲載された。この研究結果によって、これまで得られていた成果と組み合わせることで、解の漸近挙動に関する完全な分類が得られた。特に、解の漸近挙動のパラメータに関する依存性が非線形項の指数によってどのように変化するかが完全に分かった。この結果は空間3次元の場合のみ不十分なものであったが、その後に改良することが出来ており、その成果も学術雑誌に投稿中である。 他にはボルドー大学のMathieu Colin氏と共同で、磁場と相互作用する粒子の運動を記述するシュレディンガー・マックスウェル方程式における初期値問題の可解性、定常問題のエネルギー最小解の存在および定在波解の安定性に関する研究を行った。これらの成果も学術雑誌に掲載されている。 さらにバーリ工科大学のPietro D'Avenia氏、Alessio Pomponio氏と2次元Chern-Simons方程式に関する共同研究を行い、こちらの研究結果も学術雑誌「Proceedings A of the Royal Society of Edinburgh」に掲載が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の全体的な目標は、非局所相互作用が定在波の安定性に対してどのように寄与するかを解明することである。これまで研究してきた準線形シュレディンガー方程式は、ある非局所問題の極限として得られるものであり、今年度の結果によって定常問題の解構造が完全に解明された。今年度の成果によって得られた、最も難しいケースである臨界型非線形項を持つ場合の解の漸近挙動の解析手法は、他のシュレディンガー方程式の解析にも応用できると期待される。 また、シュレディンガー・マックスウェル方程式系も非局所的な相互作用を持ち、今年度の成果によって初期値問題の可解性や、定在波解の安定性に関する結果が得られた。次のステップとして、相互作用が大きい場合の最小化問題を考察することで、現れるラグランジュ乗数の詳しい情報が得られると期待しており、それが非局所相互作用の安定化効果の解明につながる。したがって、本研究の目標に向けて、着実に研究が進んでいると考えている。 さらに、2次元Chern-Simons方程式の研究や2次元シュレディンガー・マックスウェル方程式系の研究など、今後の研究テーマにつながるような新規研究も始めることが出来た。以上の理由により、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた結果を下に、非局所相互作用による定在波の安定化効果の解析を行う。今年度に引き続き、足達慎二氏氏を研究協力者として研究を行う。本研究を推進するため、研究協力者と定期的に研究打ち合せを行う。海外の共同研究者であるColin氏やPomponio氏とはメールを通じて連絡を取り合うが、余裕があれば日本への招へい、共同研究者が所属する大学への渡航も行いたい。また、国内の研究集会に積極的に参加し、様々な研究者と積極的に情報交換を行う。同時に、今年度と同様にKSU非線形解析セミナーを主催し、情報収集および共同研究のきっかけを作っていきたい。 また、研究代表者がこれまで行ってきた反応拡散系方程式や固有値最適化問題をより深く研究するために、今後は数値解析も積極的に取り入れていく。そのために、京都産業大学の西慧氏やアイシンAWの井手貴範氏と微分方程式の数値解析に関する共同研究を開始したいと考えている。
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