研究課題/領域番号 |
18K03385
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
青木 貴史 近畿大学, 理工学部, 教授 (80159285)
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研究分担者 |
中村 弥生 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60388494)
鈴木 貴雄 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60527208)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超幾何微分方程式 / WKB解 / ストークス現象 / 漸近展開 / 超幾何関数 / 一般化超幾何関数 / ヴォロス係数 / ボレル和 |
研究実績の概要 |
大きなパラメータを持つガウスの超幾何微分方程式および3階の一般化超幾何微分方程式について完全WKB解析の立場から研究を行った。前者は平成29年度までの研究課題を引き継いだ研究であり、超幾何微分方程式の標準的な解である超幾何関数および超幾何関数を用いて表される他の独立解(クンマーの解)とWKB解のボレル和の線型関係式をパラメータ空間におけるストークス幾何のタイプに対応した領域ごとに明示的かつ系統的に表示することを目指した。基本的な部分は前年度までの研究の成果として得られてるので、それらを超幾何微分方程式が持つ対称性に基づいて整理し、統一的に書き下すことを目指した。最終的な公式化には至っていないが、その目処は付いたと考えている。また、合流型超幾何微分方程式(クンマー, エルミート・ウェーバー, ベッセルなどの族)に対する同様の問題に関してこれまでに得られてきた成果を統一的な視点から整理した。また、後者については、3階の一般化超幾何微分方程式の完全WKB解析の基礎的部分の確立を目指した。一般論としてWKB解の定義やストークス曲線の定義等は代表者の過去の研究で確立されている。それを一般化超幾何微分方程式に適用するために、特性根の特異点における挙動など、この方程式に特有の性質を研究した。また、2階微分方程式の場合に重要な意味を持つ不変量であるVoros係数を一般化超幾何微分方程式に対して拡張することを試みた。定義そのものは既存の研究成果の組み合わせて可能であることが分かった。さらに原点におけるVoros係数の明示的な表示を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガウスの超幾何微分方程式に対するパラメトリック・ストークス現象の研究は概ね計画通りに進み、これまでに得られた結果を今後使いやすい形に整理する努力をしている段階である。この課程において、合流操作とヴォロス係数の整合性が美しい形で成り立つことが分かるなど、新たな発見もあり、当初考えた以上に統一的に整理された結果が得られる見込みがついた。このプロジェクトに関しては完成が近づいていると感じている。当初目指していたHeun方程式の研究に関しては、いろいろな試行錯誤は行ったものの今のところ具体的には進展しておらず、新たな視点や着想が必要であると感じている。3階の一般化超幾何微分方程式については、平成30年度初頭の段階ではmiddle convolution を活用して研究することを目指していた。この方針に沿ってガウスの超幾何微分方程式のVoros係数と3階の一般化超幾何微分方程式のVoros係数に関連が付けられないかと研究を進めたが、目立った進展が得られなかった。そこで2階の場合と同様に昇降演算子を活用することを試みた。この方法においては2階の場合の類似で考えると3次方程式の根の積分を計算する必要があるので当初は避けていた。しかし、特異点における根の展開を見ることにより根の積分の具体形を用いずに計算できることが分かった。その結果、3階の一般化超幾何微分方程式に対して原点のVoros係数が求まることがわかった。この課題に関しては当初の見込み以上の進展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で順調に進んでいる部分に関しては、引き続き初年度と同様の方針で研究を推進する。具体的に取り組むべき課題としては、まず、ガウスの超幾何微分方程式のWKB階のボレル和で得られる解空間の基底とKummerの解の対応関係を公式化する作業を完成させ論文として発表する。合流型超幾何微分方程式に対しても同様の結果を完成させ、合流操作との整合性を確認した上で統一的な視点から記述したい。次に、3階一般化超幾何微分方程式に関して得られた結果を一般の階数に拡張することを試みる。一般の階数に対しても昇降演算子は構成できるので2階の場合と同様に原点におけるVoros係数の定義と具体的表示は可能であると考えられる。もちろん、パラメータの数が増えることに伴う複雑さをいかに簡潔に表現するかが問題となると予想されるが、3階の場合の経験を生かして解決に当たりたい。併せて確定特異点x=1におけるVoros係数の明示的表示を得る試みも行いたい。この問題に関しては、x=1におけるモノドロミー作用素の固有空間の次元が2となることに起因する困難を解決しなければならない。この方程式に対する接続問題における最近の進展を参考にしつつ、解決の糸口を探りたいと考えている。Heun方程式のVoros係数の明示的な表示を得るという問題に対しては今のところ効果的なアプローチ方法が見いだせない状況であるが、具体例について初項、第2項の具体的表示を計算して、それらの形から構造を探るなどの地道な努力を続けたいと考えている。
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