研究課題/領域番号 |
18K03390
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中本 敦浩 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (20314445)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 幾何学的四角形分割 / 対角変形 / シュタイナー点 / 平面 / 射影平面 |
研究実績の概要 |
本研究では,位相幾何学的グラフ理論の結果や動機を離散幾何学的な問題に翻訳し,どの程度に同じ結果が成り立ち,そうでない場合はどのような障害があるかを明らかにすることである.特に,私はこれまで,曲面上の三角形分割や四角形分割における変形問題に取り組んできており,そのような問題が,平面的グラフを平面グラフとして各辺を直線分で描画したとき,どのようになるかを考えてきた. まず,平面の幾何学的三角形分割の変形問題においては,ドロネー三角形分割ボロノイ図との双対関係から,理論的または応用的見地からの様々な研究が見られる.しかしながら,四角形分割に関する同様の研究はほとんど知られていない.そこで,私たちはまず,平面上の(必ずしも凸でない)偶多角形が直線分の対角線を加えることにより,四角形分割できるための十分条件を与えた.それを皮切りに,その条件を緩和すべく,研究に取り組んできた.また,多角形Pを与え,Pが2つの幾何学的四角形分割を持つとき,それらが互いに対角変形と呼ばれる変形で互いに移り合うかという問題も考えてきた. さらに,東京オリンピックのエンブレムが正12角形のひし形タイリングであるという事実から着想をえて,その位相的構造を考察した.特に,ある条件を満たす射影平面の四角形分割Gを,非可縮閉路Cで切り開いたとき,得られる平面グラフが位相的に正偶多角形のひし形タイリングと同型であることをつきとめた.そして,本研究では,その周辺にどのような問題があり,それらがどこまで明らかにできるかという問題について取り組んできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平面に必ずしも凸でない多角形Pを与えたとき,各辺が直線分になるという制約のもと,内部が三角形に分割できることは簡単にわかる.この事実は,有名な美術館問題のエレガントな証明にも用いられており,とても重要である.しかしながら,Pを四角形に分割しようと思うと,凹みの数や分布によっては,四角形分割できないという状況が起こりえる.私たちは,Pにおいて,凹角が連続する区間をspiralと呼び,spiralの個数をPのspiralityと定義した. そのspiralityを用いて,Pのspiralityが1以下であれば,Pは幾何学的四角形分割を持つことを証明した.(一方,spiralityが2の多角形Pで,幾何学的四角形分割できないものが存在する.)また,Pのspiralityが2以下であれば,どの2つの幾何学的四角形分割も対角変形で互いに移り合うことを証明した.(一方,spiralityが3の多角形Pで,Pのある2つの幾何学的四角形分割で対角変形で移り合わないものが存在する.) 前者に関してはよい証明を与えることができたのであるが,後者に関しての現状の証明は,とても煩雑であり,場合わけが膨大になってしまっている.特に,部分的にrigidになってしまう四角形分割の扱いが難しく,その部分の克服が冗長になってしまっている.この辺りの記述に何らかのブレークスルーを与えることができると,読みやすい証明が与えられるのではないかと考えている. 正偶多角形のひし形タイリングに関しては,私たちは,それらがある極小性を持つ射影平面の四角形分割に位相的に対応することを突き止めた.論文執筆の過程で査読者とのやり取りを行い,それからZonotopeというベクトルから定まる幾何学的対象ととても相性がよいということがわかった.現在は,その周辺での情報収集を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
上で述べた通り,多角形の幾何学的四角形分割の結果の論文を執筆したいと考えている.そのためには,場当たり的な証明を乗り越えるような理論構築が必要となる. また,zonotopeに関する情報収集を行い,そちら側の動機や結果から,私たちの研究に何か還元できないかに関して考察を行う予定である.少なくとも,zonotopeは任意の次元で定義されるものであり,現状では私たちが考える2次元の結果がどの程度,高次元に拡張できるかという問題は手っ取り早い. 研究は順調に進んでいる上に,新しい問題も見つかり,よい帰結を求め,研究を遂行してゆきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスによる出張の中止などがあったため.研究費を余らせてしまったが,今年度,同じような研究集会を探して,再度,出張を行いたいと考えている.
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