研究課題/領域番号 |
18K03392
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
根元 多佳子 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20546155)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 計算可能性理論 / 直観主義論理 / 構成的数学 / 逆数学 / 構成的逆数学 |
研究実績の概要 |
計算可能性理論の直観主義論理上での再構築について研究を行った。 特に「自然数の有限集合は計算可能である」という補題は計算可能性理論の実際的な問題を解く際に非常によく使う補題であるが、自然数の集合が有限であることの定義は1.その集合が有限列でコードできる、2.その集合に上限がある、3.その集合の濃度の上限が自然数で与えられる、4.その集合の要素はいくらでも大きいものがあるわけではない、5.その集合の濃度の上限は自然数で与えられないことはない、と少なくても5つの定義が考えられ、実際に用いられる。これらの定義は古典論理上では同値であるが、直観主義論理上では同値になるとは限らない。同様に、自然数の無限集合の定義も少なくても5つは考えられる。これらの定義の特徴づけを直観主義論理上で構成的逆数学の手法で与え、体系 i\Sigma_1 上で同値にならないことを示した論文が学術雑誌に受理され、現在最終版を作成中である。 また、構成的逆数学のケーススタディのとして以下の論文を投稿し、1は出版が決定した。 1.実数列の一様収束定理を構成的逆数学での解析:構成的逆数学の体系 M_3^{\omega} 上で特徴づけを与えた。 2.上記の有限集合の特徴づけを用いて、完備可分距離空間上の Baire のカテゴリ定理が\Sigma^0_1 帰納法と体系 EL_0^* 上で同値であること、EL_0^*+\Sigma^0_1 帰納法の体系で至る所微分不可能な連続関数が C[0,1] 上稠密に存在を解析することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直観主義論理上で自然数の有限集合及び無限集合の定義の同値性について論じた論文が学術雑誌に受理されている。さらに実数列の一様収束定理に特徴づけを与えた論文が論文集に受理され、また、構成的逆数学の手法で Baire カテゴリ定理および至る所微分不可能な連続関数の C[0,1] 上での稠密な存在の証明を解析した論文が現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
計算可能性理論において重要な還元性について、直観主義論理上で妥当な定義を与え、それらの性質を解析する。特に、自然数の部分集合 A、Bの many-one 還元性は、直観主義論理上で 1. x \in A <-> f(x) \in B 、2. (x\in A -> f(x) \in B)\land (x\notin A -> f(x) \notin B)、 3.(f(x) \in B -> x\in A)\land (f(x)\notin B \to x \notin A)、4. x \notin A <-> f(x) \notin B などが考えられ、それぞれ同値にならないと考えられる。しかし、これらの性質は古典論理上では同値になり、様々な定理の証明に用いられている。そこで、どの定理を証明するのにどの性質が用いられているかを解析し、妥当な還元性の定理を与える。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初は、年度後半に数週間程度海外の研究機関を訪問し共同研究を行うことを計画していたが、年度後期に非常勤講師の用務が入り、予定をを短縮したため。
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