研究課題/領域番号 |
18K03394
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉信 康夫 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90281063)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数学基礎論 / 公理的集合論 / 強制法 / 強制公理 |
研究実績の概要 |
固有強制法公理(PFA)とは、強制公理と呼ばれる集合論の公理の一種であり、連続体の濃度がアレフ2であることなど多くの帰結をもたらすことから集合論における重要な研究対象である。本研究の目的は、PFAや類似の公理が、どのような半順序集合による強制拡大の下でどの程度保存されるかを体系的に明らかにすることである。 この研究にあたっては、半順序集合の固有性と呼ばれる性質が、さまざまな強制法の下で保存されるかどうかを知ることが重要な手がかりとなる。これに関連して、前年度の研究で、「十分大きい濃度κについて、κ閉な半順序集合による強制法は任意の固有半順序集合の固有性を保存するか?」というKaragilaの問題を否定的に解決していた。 これに引き続く形で、令和元年度の研究の結果、代表者は次の成果を得た。 「任意の自明でない強制法に対し、それによって固有性を破壊されるような固有的半順序集合をみつけることができる。」 これは、前年度の代表者の成果を受けて、Karagilaが再度問題として提示していたものに対する解答であり、前年度の成果を大幅に拡張するものになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究を継承する形でKaragilaのもうひとつの問題を解決でき、PFAの保存についての研究のための材料はさらに整備されたといえる。ただ、今年度はPFAの保存自体の研究については大きな進展はみられず、またマーティンの極大公理(MM)の保存についても大きな成果はないので、今年度の研究の進捗は全体としてはやや停滞気味ともいえる。ただ昨年度には当初の予想を大きく超える成果が得られていたことを考えると、ここまでの期間を通してみれば十分満足できる進捗状況であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まずはPFAの保存についてこれまでに得られている成果を整理して、論文として投稿することを目指す。PFAの保存については、αPFAなどのヴァリエーションにも考察を広げて研究を続ける。またここまであまり考察してこなかったMMの保存についても着手する。 新型コロナウイルスの流行により、当面国内外の学会や研究集会への参加、その他研究打ち合わせのための出張は困難な状況が続いているので、通信環境を整備して、ビデオ会議やメールなどを通して他の研究者との連携を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の講義などの業務が終わり比較的時間がとれる2月後半以降にいくつかの研究集会への参加と連携研究者を呼んでの共同研究を計画していたが、新型コロナウイルスの流行によって多くの予定を取り止めざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。同様の状況は当面続くことが予想されるため、ビデオ会議やメールなどを通じて連携研究者やその他の研究者とスムーズに情報交換ができるように、通信環境を整備する。年度後半に状況が許すならば、国内の研究集会への参加や、連携研究者を招いての共同研究も行いたい。
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