研究実績の概要 |
(1)研究分担者の野崎氏との共同研究では、正単体を含むよい 2-距離集合の特徴づけと構成を行った。ユークリッド空間の有限部分集合 X の相異なる 2点間の距離が丁度 2-種類現れるとき、X を 2-距離集合という。球面上の2-距離集合については、幾つかのよい構成法が知られているが、同一球面上にない 2-距離集合(非球面 2-距離集合)のよい構成法についてはほとんど知られていなかった。本研究では、d 次元ユークリッド空間上で d+1 点の正単体を含み、頂点数が 2d+2 点以上の 2-距離集合について考察した。特に、Witt デザインや有限アフィン空間から得られるデザインなどを用いて、所望の(極大な) 2-距離集合を構成することができた。本研究成果については、RIMS 共同研究(公開型)「代数的組合せ論と関連する群と代数の研究」での研究報告を行い、「Maximal 2-distance sets containing the regular simplex」として査読付きジャーナルへ投稿中である。また、arXivにも公表している。 (2)宗政氏(東北大学)との共同研究では、Ramsey number の類似である complementary Ramsey number cR(s,t,u) について、Ramsey graph との関係性を明確にし、cR(s,5,3), cR(s,4,4) の値を決定した。特に、Ramsey (3,5)-graph や Ramsey (4,4)-graph の分類を用い、最終的には計算を用いることにより結果が得られた。本研究成果については、応用数学合同研究集会(及びその報告集)、幾何学と組合せ論2019、数理情報科学さくらセミナーにおいて研究発表を行い、また論文を査読付きジャーナルへ投稿し受理された。
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今後の研究の推進方策 |
上記(1)に対して、正単体を含むよい 2-距離集合を無限個構成することができたが、分類に向けてはまだギャップがある。この問題は、極値集合論におけるある (k,L)-system の分類問題に帰着され、一般的には難しい問題である。そのため、ある特定の場合に対してその分類を試みる。そこでは、計算機をより有効に使う必要があるであろう。上記(2)に関連して、当初の一つの目標は cR(5,5,5) の値を確定することであった。ここについては、まだかなり広い範囲でしか確定できていない。少しでも値の範囲を絞り込みたい。 平面上の距離集合に関する課題「平面上のよい距離集合は正三角形格子上にあるか」について、現段階においては、何も進展を得られていない。難しい問題ではあるが、現れる距離に着目することで、この問題へのアプローチを試みる。
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