研究課題/領域番号 |
18K03397
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
酒井 拓史 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (70468239)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 反映原理 / 基数算術 / 巨大基数 |
研究実績の概要 |
2020年度までに,n が 3 以上のときの aleph_n レベル(以下これを "高レベル" と呼ぶ)の定常性反映原理・Fodor 型反映原理・ゲーム反映原理が,基数算術に及ぼす影響を明らかにしていた. 2021年度は,高レベルの Rado 仮説が基数算術に及ぼす影響について研究した.aleph_2 レベルの Rado 仮説は特異基数仮説という基数算術の命題を帰結することが知られているが,高レベルの Rado 仮説からはこの特異基数仮説が帰結されないことを明らかにした.この証明中では,高レベルの Rado 仮説が Prikry 強制拡大で保存されることを明らかにしている.このことからは,高レベルの Rado 仮説が特異基数の冪に上限を与えないことや,弱いスクエア原理を導かないことなど,多くのことが明らかになった.本研究成果は現在論文を準備中である.また,高レベルの Rado 仮説が連続体濃度に与える影響を調べるために,どのような強制法が木の特別性を保存するかを組織的に研究した. また,様々な反映原理を導くジェネリックな初等的埋め込みについても,神戸大学名誉教授の渕野昌氏と共同で研究を行った.これにより,鎖条件を持つジェネリックな初等的埋め込みの臨界点となることが,より小さい基数に反映することや,ジェネリックな初等的埋め込みの存在が,一階述語論理で記述できることなどを明らかにした.これらの研究成果は,高レベルの反映原理が基数算術に及ぼす影響を考察する上で,有用な知見となると期待している.本研究成果は現在論文を投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は,高レベルの Rado 仮説が基数算術に及ぼす影響を明らかにすることを第一の目標としていた.高レベルの Rado 仮説が特異基数仮説を導かないことは明らかにできたが,連続体濃度に何らかの上限を与えるかどうかは明らかにできなかった.また,これまでの研究で,高レベルのゲーム反映原理が基数算術に強い帰結をもたらすことは明らかにしていたが,それ以外の高レベルの反映原理で基数算術に強い影響を及ぼすものを見つけることはできなかった. 本研究は国内外の研究者と議論しながら進めようとしていたが,2020年度に続いて2021年度も,新型コロナウイルスの影響で,国内外の研究者と直接あって議論したり意見交換する機会が限られた.これが研究がやや遅れた一因であると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,高レベルの Rado 仮説が連続体濃度に及ぼす影響を明らかにしたい.また,ZFC と無矛盾な高レベルの反映原理で基数算術に強い影響を及ぼすものを探る.後者の研究では,サイドコンディション法などの最新の強制法の手法が有用であると予想している. 研究代表者は,2022年度に京都大学数理解析研究所の共同利用研究集会の代表者となっており,最新の強制法の手法をテーマとした研究集会を開催する予定である.そこには UCLA の Itay Neeman 教授をはじめ,最新の強制法の手法の開発者を招待している.彼らと活発に議論しながら本研究を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では研究費の大部分を旅費に充てる予定であったが,新型コロナウイルス感染症の影響で国内外の旅行ができない状況であった.このために次年度使用額が生じた. 2022年度は国内外の移動制限が緩和されると予想される.研究代表者の旅費や,研究者招聘に研究費を使用する.また,新型コロナウイルスの発生以降,オンラインのセミナーや集会も増えている.オンラインで議論を円滑に進めるための機材導入にも使用する.
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