研究実績の概要 |
辺着色された完全グラフや完全2部グラフの構造について研究を行った.辺着色されたグラフを(G,c)と書く.ただし、c:E(G)->[p]とする.Gの部分グラフHがproper coloredとは、その任意の隣接する辺e,fの色が異なる、すなわちc(e)とc(f)が異なることを意味する.Hのすべての辺の色が異なる時、Hはrainbowであるという. 辺着色されたグラフは、有向グラフの一般化になっている.特に、(G,c)に対して、適当な点着色c^*:V(G)->[p]が存在し、Gの任意の辺xyに対して、c(xy)がc^*(x)またはc^*(y)となっている時、(G,c)はessentially digraphであると呼ぶ. 本年は、未解決なBermond-Thomassen予想「最小出次数が2k-1以上有向グラフはk個の素な有向サイクルを含む」の辺着色グラフへ一般化の研究を行った.特に、グラフを完全グラフに制限すると、以下の予想が知られている「(K_n,c)の最大単色次数がn-1-(3k-2)以下ならば、k個の素なproper coloredサイクルが存在する.この予想はBroersmaらの予想で、彼らはk=1,2の時を解決している. Bermond-Thomassen予想が有向完全2部グラフに対して成り立つことはBaiらによって示されている.その辺着色への一般化を考えた.この時、研究代表者とCada准教授(チェコ・ウェストボヘミア大)や小関准教授(横浜国大)との共同研究による結果を使うことにより、問題を特殊な有向2部グラフの場合に置き換えることができ、その場合を解決することによって、「(K_{n,n},c)の最大単色次数がn-(2k-1)以下ならば、k個の素なPCサイクルが得られる」ことを証明することに成功し、8月にイギリスで開催された英国組合せ論国際会議で講演を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通りBermond-Thomassen予想の辺着色グラフへの一般化は予定通り進んでいる.特に、研究の過程で色連結性という重要な概念が得られた.色連結性とは、辺着色グラフ(G,c)の任意の2点x,yに対して、辺素な二つのパスP,Qがが存在し、その合併P U Qにおいて、x,yの両方でそれぞれ2辺の色が異なることをいう.有向グラフにおける強連結を一般化した概念で、多くの類似の特徴を持っていることが確認されている.この概念を使うことで、これまで得られた辺着色されたグラフの構造をシンプルに表現できることが期待されている.
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