研究実績の概要 |
(G,c)を辺着色グラフ,c: E(G)→Nを辺着色写像とする.Gの任意の2点x,y∈ V(G)に対して,Gに彩色サイクルの列C_1, C_2,..., C_lで,1. x∈ V(C_1), y∈ V(C_l) かつ 2. 任意の1≦ i< lに対して,V(C_i)∩ V(C_{i+1})は空集合でない,となるものがある時,x,yはサイクル色連結であるという.パスPの端点xに接続している辺の色をc_x(P)と書く.もし,x,yを端点とする彩色パスP,Qで,c_x(P)≠c_x(Q) かつ c_y(P)≠c_y(Q)となるものがあるとき,x,yは色連結であるという.また色連結性がV(G)上の推移律を満たすとき,(G,c)は好適であるという.容易にx,yがサイクル色連結ならば常にそれらが色連結になることを確かめられる.しかしその逆の主張は必ずしも成り立たないことが知られている.(G,c)が好適であるとき,(G,c)を強好適と呼ぶ.Saadは2辺着色完全グラフが好適であることを示し,Bang-Jensen and Gutinはそれを,2辺着色完全多部グラフのあるクラスに一般化した.今回,任意の自然数k,l∈ Nに対して,任意のk辺着色l部グラフが強好適であることを示すのに成功した.また色連結性とサイクル色連結性について,以下の性質が成り立つことを示した. 定理:任意のk辺着色グラフ(G,c)に対して,次の主張は同値である. 1.(G,c)は色連結.2.(G,c)はサイクル色連結.3.任意の空でないGの真の部分グラフHに対して,彩色サイクルで,HとG-V(H)の両方と交差するものがある. 一般に辺着色グラフは有向グラフの一般化になっているが,上の定理は有向グラフの強連結性の特徴付の一般化になっている.
|
今後の研究の推進方策 |
上述の通り辺着色グラフは有向グラフの一般化になっていることが知られている.実際,D=(V,E)を有向グラフとする.DのunderlyingグラフG_Dの任意の辺xyに対して,xyは有向グラフDにおいてx→yまたはy→xという向きを持っている.x→yのとき,辺xyの色をyと定義して得られる辺着色グラフ(G,c)は有向グラフの多くの性質を保存していることがわかっている.これまでもその性質を暗に使って,Bankfalvi and Bankfalviなど多くの研究者が有向グラフの構造やその逆に辺着色グラフの構造を明らかにしてきた.そこで今後の研究では辺着色グラフ(G,c)の有向グラフ的な部分構造を解明する.具体的には,Gの部分グラフHに対して,次の性質を持つとき,本質的有向グラフ(essential digraph)と呼ぶ:適当なHの点着色c^*:V(H)→Nが存在し,Hの任意の辺xyに対して,c(xy)∈{c^*(x),c^*(y)}である. このような部分グラフHに対して,対応する有向グラフD_Hを定義でき,D_Hの構造を使ってHの構造を得ることができると考えられる.Hの構造をD_Hを使って解明する.次に以下の問題が生じる「GはG-V(H)とHに分離できるが,Hの構造がグラフ全体Gの構造にどのように影響与えているか,特に本質的有向グラフの構造Gの色連結性やサイクル色連結性など大域的な構造にどのような影響を与えているか」.今後の研究では,この問題を解明する.特にまずGが完全グラフや完全2部グラフなど特殊な場合を解明し一般化への足がかりを得る.
|