研究課題/領域番号 |
18K03403
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
薄葉 季路 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (10513632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 巨大基数 / 集合論多元宇宙 / tightness number / 強コンパクト基数 / symmetric extension |
研究実績の概要 |
集合論的多元宇宙の研究に関しては次のような結果が得られた: 適当な仮定の下で、宇宙Vが部分宇宙のsymmetric extensionになっていることが、Vと部分宇宙が共通の強制拡大を持つことと同値であることを示した。これにより「symmetric extensionである」という性質が一階述語論理の文として記述可能であることを示し、とくにそのような部分宇宙全体の構造が一階の枠組みで展開可能であることを示した。この結果に関して国内外で発表を行い、結果をまとめた論文を査読付き国際雑誌に投稿した。さらにこの研究で得られた理論を応用して、Reinhardt cardinalなどの超巨大基数の存在について、適当な仮定の下ではそのような超巨大基数が存在しえないことを証明した。この結果について、現在論文を準備中である。 その他、巨大基数および集合論的位相空間に関して次のような結果が得られた。1.位相空間において、位相を強めた際にそのtightness numberがどのように変化するかについて考察し、ある巨大基数がその上限を与えること、および連続体仮説のもとではその巨大基数が最適な上限であることを示した。この結果について国際研究集会で発表をおこない、結果をまとめた論文が査読付き国際雑誌に掲載された。2.δ-強コンパクト基数に関して研究を行い、一様超フィルターの存在、積空間のtightness numberの上限など様々な形で特徴づけ可能であることを示した。この結果について国際研究集会で発表を行い、論文を査読付き国際雑誌に投稿した。3.Apter、Dimopoulosらと強コンパクト基数において一般連続体仮説が破壊されることの無矛盾性の強さに関して共同研究を行い、その結果を国内研究集会で発表した。また、その結果をまとめた論文を査読付き国際雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎モデルの一様定義可能性を、symmetric extensionも含めたより一般的な基礎モデルに対する一様定義可能性に拡張することに成功し、2018年度に得られた結果がさらに一般的な状況でも成り立つことを示すことに成功した。一方で、選択公理のもとでは基礎モデル全体は下方向への有向性等、非常によい性質を持つが、選択公理がない状況では成り立たないことを2018年度で示したが、2019年度の研究で、対象をsymmetric extensionまで含めた一般的な基礎モデルまで拡張することで、有向性などの性質をもちえることを示し、単純な強制拡大よりもsymmetric extensionを含めた一般的な状況で多元宇宙を考えることがより有効であることの証左がえられた。また、この一連の研究でえられた理論がReinhardt cardinalなどの超巨大基数へ応用可能であることが判明した。2018年度の研究で巨大基数と多元宇宙論の間に、予想できなかった結びつきがあることが判明しているが、今回の研究により、選択公理がない状態でも非常に強い結びつきがあることが予想できる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の結果を踏まえて、symmetric extensionを含んだより一般的な多元宇宙の解析を進める予定である。選択公理が成り立たない宇宙の構成法として、symmetric extensionは非常に一般的な手法であるので、当初の目的の一つであった選択公理が成り立たない状況での多元宇宙の解析についても非常に有用であると思われる。また、超巨大基数への応用があることが判明したので、この路線を引き続き模索し、超巨大基数の存在について更なる研究を進める予定である。2019年度から引き続いて池上大祐および、早稲田、筑波大学の学生でオンラインでゼミを開催し、得られた結果をゼミでの議論を通して発展させていく予定である。 一方で、コロナ禍による研究環境の変化は無視できないものである。特に国内外での研究集会の中止による研究への影響、講義のオンライン化などによる負担増などは今後の研究計画に予想ができない変更を強いる可能性があるが、可能な範囲で適宜対応していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額のため、特に記入の必要はない。
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