本研究は、一辺が10km程度までの領域における局地気象のメカニズムを把握するための融合数理モデルを構築することを目的として、2018年に研究を開始した。このスケールの気象現象は、天気予報や気候変動予測などの大規模な問題に比べて深く追求されることが多くはないが、我々の身近に存在する様々な環境問題に深く関係している。このような局地気象解析に資する数理モデルを構築するためには、伝統的な偏微分方程式系による流体モデリングに加えてデータ同化や時系列統計解析など、多様な数理科学的技術を融合する必要がある。 本研究では、5つのサブテーマ (A)3次元詳細数値シミュレーションコードの高度化、 (B)森林に対する多孔性媒質モデルの導入と均質化法の適用、(C)統計モデルによる観測ステーションの相関の解析、(D)データ同化による観測データのパラメータへの反映、(E)モデル中の各種物理定数に対する機械学習を用いた高精度推定、を設定して研究を進めてきた。(A)(B)は局地気象シミュレーションにおいて、地形や地表面の性状を適切に考慮するものであり、(C)(D)(E)は限られた観測データを用いて局地気象を適切に把握するためのものである。本研究の研究協力者であるフィンランド国立環境研究所の研究者とは必要に応じて電子会議を行い、議論を続けてきた。 最終年度においては、本研究の成果をまとめてMeteorology and Atmospheric Physics誌(Springer)に投稿した論文について、査読者から指摘を受けて再検討や再解析を実施し、最終的に2021年12月に掲載が決定した。
|