研究課題/領域番号 |
18K03410
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
山本 野人 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30210545)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 精度保証 / 力学系 / Lyapunov 関数 / 非双曲型平衡点 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である精度保証技術の力学系への応用に関しては、受託者らによるLyapunov関数の精度保証による構成法の開発がある。これはすでに他の研究者によるいくつかの応用がみられ、有効なツールとなっていると思われる。しかしながら、この構成法は、いわゆる双曲型平衡点近傍に限定して適用可能となるものであった。 これをさらに発展させる方向は二つあり、一つはLyapunov関数の定義域の拡張である。これについては、既存の研究がいくつかあり、精度保証に基づくものも開発されている。我々としては、Lyapunov関数の定義域が狭くとも精度保証計算との組み合わせによって大域的な現象の解析が可能となることから、こちらの方向を選択しなかった。 今一つの方向は、非双曲型平衡点近傍でのLyapunov関数の構成である。この場合は一般的にはLyapunov関数が存在するとは限らず、これを見つけるための汎用的な方法の開発は従来から難しいとされてきた。 昨年度、我々は、非双曲平衡点近傍でのLyapunov,関数の構成法として、ある程度の汎用性を持つものの開発に成功した。今年度はこれを理論的に整えて、適用範囲を広げることを目指した。この方法は力学系の標準形理論に基づくものであり、算定手法としては明確な手順を持つ。ただし、次元を拡張すると場合分けが増え、計算そのものは煩雑になる傾向がある。これらの現状を踏まえて、理論の明確化と発展方向の提示を行い、その内容をいくつかの国内学会で発表した。また、これに基づいた研究発表を論文を執筆した。この論文はすでに投稿され、掲載が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績概要で述べたように、非双曲型平衡点近傍でのLyapunov関数の構成法の開発は、従来から困難なものとみなされていた。与えられた方程式が簡単なものであっても、Lyapunov関数が存在しない場合・存在しても相当複雑な形になる場合があり、これらを判別することすら個別に当たるしかないと言う状況であった。双曲型平衡点の場合には、少なくとも局所的には二次形式のLyapunov 関数が必ず存在することと対照的である。 本研究では、この困難を克服し、Lyapunov関数が存在する場合にはこれを導出するための道程を与えている。理論的に整理されたことで、方法の原理が理解しやすくなり、また、発展方向を見定める展望が得られている。これは当初の計画と弾き比べてみて、順調な進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ、さらなる発展を目指す。理論的には、高次元の問題に対する場合分けの整理が挙げられる。現状では3次元までについての考察があるが、これも完全ではないので、より深い理解を目指す。また、計算が煩雑になる難点を解消するために、数式処理ソフトによる自動算定法を開発したい。さらに、非双曲型平衡点近傍でのLyapunov関数の応用についても探っていく。これまでは自在に構成できなかったこともあり、非双曲平衡点近傍での解析にはLyapunov関数が利用されてこなかったと言う現状がある。非双曲平衡点周りの問題は、中心多様体が絡む・分岐現象とも関係するなど複雑な解析を要するものが多く、これらに対して有効な利用法を見出せれば、その意義は大きい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末にパリ・ソルボンヌ大学で国際研究集会を主催する予定があり、これに関する渡航費用・招待費用などを計上していた。しかしながら新型コロナウイルスの影響で中止となり、そのためこの計画を次年度に繰り越した。他にも参加予定で中止になった研究集会がいくつもあり、これらにかかるはずの費用が執行不能となった。 次年度は、上記の国際研究集会を開催するために使用する計画である。
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