研究課題/領域番号 |
18K03410
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
山本 野人 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30210545)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 精度保証法 / 力学系 / Lyapunov関数 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究実績を踏まえ、その継続発展を行なった。すなわち、非双曲型平衡点および不動点近傍のLyapunov関数の精度保証法による構築についての研究である。 前年度までに、連続力学系の非双曲型平衡点近傍におけるLyapunov関数の構築に関しては、一定の成果を上げることができた。これは、二次元の問題に限定され、かつ1次項に対して回転作用を持つ力学系に関するものである。その背景にはHopf分岐理論があり、これと密接な関係を持つことが予想されている。この系について、任意の次数までの多項式変換によって Lyapunov関数を構成する方法を提案した。今年度は、この方法をさらに検討し、多項式の次数を増やしていくことで (1) どこかの次数でLyapunov関数を構成できる (2) その次の次数でLyapunov関数を構成することに矛盾を生じない のどちらかが起こることを示した。さらに、解析関数に関する複素数の系について考察することで、(2)の場合に次数無限大に至ってもLyapunov関数が構成できない時の状況を調べた。これらについては論文執筆の準備を進めている。 応用面では、筑波大学・高安助教らと協働し、非線形シュレディンガー方程式の大域解の存在検証に関わる問題について本手法を適用した。その結果、ある一定の条件の元で大域解が存在することを見出している。これは高安氏らとの共著論文として執筆する予定である。 また、離散システムの不動点が非双曲型である場合についての研究も進めた。連続系と違い、回転を持つ二次元の系であっても非双曲になる場合が無限に存在し、連続系とは全く違う様相を示す。解析は困難を極めたが、一定の成果を得ることができた。これに関しては今後の発展を待って成果報告を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要で述べたように、前年度の研究成果を肯定的に拡張し、これを基盤にして新たな方向への発展も行なっている。当初の予想では、非双曲型平衡点・不動点近傍の解析は相当な困難を伴うものと思われたが、一つのブレイクスルーを投じることが出来たと考えている。 なお、コロナ禍の影響で、当初予定されていた研究集会などの主催についてはキャンセルされた。そのため研究の進展とは別に予算の使用状況に遅れが生じている。これは受託者の責任ではないので、本項目では考慮に入れない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため、本年度までの成果をまとめ、執筆予定の論文等の成果発表を十全に行うことが第一の目標である。さらに、非双曲型平衡点・不動点に関するLuapunov関数構成について自動判定を行うコンピュータシステムの開発、Hopf分岐理論との関係の解明、離散システムに関する研究の推進、2次元以上の力学系への展開、実際の現象を扱う研究者との協働による本手法の応用展開などを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために、予定していた国際研究集会の主催がキャンセルされたこと、国際学会・国内学会がオンライン開催に変更されたために旅費の支出が大幅に減ったこと、研究打ち合わせ等についてもオンラインで行うことが増えたために支出が減ったこと、などが挙げられる。付言すれば、オンライン開催は経費節約のためには有効であるが、研究の進展は対面での打ち合わせを伴わないと阻害される面が大きい。コロナ終息後には通常の形態に戻したいと考える。 したがって、コロナが収束する場合には、研究集会の主催や対面を伴う研究打ち合わせ等の再開によって予算を使用する。そうでない場合には、オンライン打ち合わせのためのソフトウェアの拡充、パーソナルコンピュータをはじめとしたIT機器の更新・拡充、研究協力者の雇用などを主として使用する。
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