研究課題/領域番号 |
18K03416
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西山 高弘 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (60333241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 力学系 / キラル液晶 / ブルー相 / ベルトラミ流 / 不変トーラス / 磁気群 |
研究実績の概要 |
非粘性非圧縮性流体の定常運動の一つ,ベルトラミ流に直交3方向の周期性をもたせたABC流(Arnold-Beltrami-Childressの流れ)がカオス状の流線をもつことは以前からよく知られた事実である.その一方で,ABC流は非カオス的・秩序的な流線ももち,それらは不変トーラスと呼ばれるチューブ状曲面にらせん状に巻き付いている.ABC流が立方晶の結晶学的対称性をもつようにパラメータを定めるとき,不変トーラスの並び方がコレステリック液晶(キラルネマチック液晶)のブルー相Iにおけるダブルツイストシリンダ(液晶分子がらせん状に巻き付く円柱状曲面)の並び方と非常によく似たものとなることを指摘し,その類似性を空間群を用いて詳しく調べたのが本課題採択前の研究である.そこでは,別の立方晶系空間群の対称性をもつよう新たにベルトラミ流を導出し,その不変トーラスがブルー相IIのダブルツイストシリンダと類似して並んでいることも示した.本年度では,空間群の代わりに磁気群(空間群を拡張した黒白群と同型で,軸性ベクトルの対称性・反対称性を表すもの)を用いると,それら立方晶の対称性をもつベルトラミ流について,ブルー相I,IIとの関係性がより明確にできるうえ,よどみ点やヘテロクリニック軌道といった流れの構造を系統的に論じることが可能となることを示した.また,その磁気群を用いる方法により,六方晶の対称性をもつベルトラミ流をいくつか導出し,それらの不変トーラスを数値的に観察した.その結果,一つのベルトラミ流における不変トーラスの並び方が,キラルスメクチック液晶のブルー相におけるダブルツイストシリンダの配置モデルと類似していることを明らかにできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルスメクチック液晶のブルー相の構造に関連し,六方晶の対称性をもつベルトラミ流を調べることは,当初の研究計画の一つであり,論文として発表するに値する結果を出すことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は,本課題採択前に研究計画調書に書いた通り,立方晶の対称性をもった,ブルー相以外のキラル液晶相に関連して,立方晶系磁気群の対称性をもつ力学系を調べる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題採択前に行った研究について投稿していた論文が,当初の見込みよりも遅れて受理され,その論文を基にして行った本課題についての研究発表を,日本液晶学会での発表以外,見合わせて平成31年度(令和元年度)に延期したため,次年度使用額が生じた. 平成31年度(令和元年度)は,これまでの成果を第65回理論応用力学講演会(北海道大学)で発表することが既に決まっている.また,その他の研究集会やセミナーで発表または情報収集する計画であり,そのための旅費を主な支出として見込んでいる.
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