研究実績の概要 |
2018年度はまず共分散行列の構造についての検定について、観測項目の数が標本サイズより大きい場合で、母集団分布が正規分布を含むような広い分布族に対しても適用可能なものの開発を行った。具体的に導出したものは, 単位行列との同等性の検定, Sphericity検定, すべての観測項目に対する無相関性の検定に対する検定規準である。以上の検定統計量は, Himeno and Yamada (2014, JMVA)で用いた共分散行列の推定量を拡張したものを利用している。検定統計量の漸近帰無分布を次元数と標本サイズを同時に大きくする漸近枠組みにおいて導出し, 検定規準を導いた。 第2に、2群の判別問題について、次元数が標本サイズの合計を超えない下で、誤差ベクトルが独立に同一の分布に従うような場合に線形判別関数の誤判別確率の漸近近似とその一致推定を、次元数と標本サイズを同時に大きくする漸近枠組みにおいて導出した。このような漸近近似は、誤差ベクトルの各成分が正規分布の場合には多くの研究成果が得られており、とりわけマハラノビス距離が1と同位のオーダーを仮定したもとでえられている。今回のように分布を一般化した場合は、以上の仮定に加えて、2群の平均の差を共分散行列の逆行列の行列平方根をかけてできるベクトルの各成分が0に収束するという仮定を加えた下で導出している。この仮定を弱くすることが今後の課題である。 第3に、本研究に関連するものとしてGMANOVAに関する高次元漸近推論について母集団分布が正規分布を含むような一般の下で得られたため、その成果を現在論文としてまとめている。 1つめと2つめの成果は2018年度統計関連学会連合大会で発表した。
|