まず、昨年度に実績報告した高次元データに対する多変量一般化線形モデルにおける平均パラメータについての両側線形仮説に対する検定問題について報告する。投稿していた論文に対して検定統計量を定義するための条件が不十分であったために、その条件を明確化する修正を行った。投稿した論文はTheory of Probability and Mathematical Statisticsにacceptされた。 つぎに正規母集団に対する高次元データの完全独立性の検定に対する研究について報告する。相関係数のL2距離に基づく検定統計量について、帰無仮説が真であるという仮定の下で次元数と標本サイズが共に大きくなる漸近枠組みにおいて確率分布の漸近展開を1次の項まで導出し、その展開式を用いて検定規準の改良を行った。この結果を論文にまとめCommunications in Statistics - Theory and Methods - に投稿し、acceptされた。また成果の一部について、9月に北海道大学で行われた日本数学会2022年度秋季総合分科会にて``High-dimensional asymptotic expansion of the null distribution for testing complete independence of normal random variables''という題目で発表した。 最後に研究期間全体を通じて実施した研究の成果について記す。まず、上記にもある多変量一般化線形モデルにおける平均パラメータについての両側線形仮説に対する検定問題の検定統計量について次元数と標本サイズが共に大きくなる漸近枠組みにおいて帰無分布の極限近似を与え、それに基づく検定法を提案した。また、関連研究として平均の検定や完全独立性の検定などで上記にあるような漸近展開を導出した。
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