研究課題/領域番号 |
18K03420
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
代田 健二 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (90302322)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 係数同定問題 / 抽象勾配法 / 弾性波動場 / BiCG系解法 |
研究実績の概要 |
当該年度は,研究計画における「(ii)多次元スカラー波動方程式の境界値問題に対する直接的解法の開発」「(iv)多次元弾性波動方程式に対する開発手法の応用」を中心に実施した.(ii)については,GPU並列計算プログラムを作成・実行することにより,昨年度までの課題であった計算時間の短縮に成功した.さらにBiCG系解法を元にしたテンソル積構造BiCGSTAB法,GPBiCG法,GPBiCGSafe法について再度比較検討を行い,現時点ではテンソル積構造GPBiCGSafe法が最も収束性が高く高速であることを明らかにした.一方,さらなる収束性向上のため,より効果的な前処理技術の導入を検討したものの,有効な手法を確立するには至らなかった.今後は,cuBLAS,cuSPARSEなどのCUDAライブラリ使用による更なる高速化,より効果的な前処理の検討,そして,より収束性の高いGMRES法など別方法の導入について検討していく.(iv)については,(iii)で開発したH2勾配法を線形弾性場のラメ係数同定問題へ応用し,二材料を想定した問題については,一定精度で同定することに成功した.一方,三つ以上の複数材料を想定した問題については,係数関数値や変化範囲の意味で代表的な箇所のみ一定精度で同定でき,他の箇所については不十分な同定結果となり,実用問題への応用に大きな課題を残すことになった.H2勾配法のパラメータ選択方法を再検討,および問題設定の見直しなどを行うことにより,実用により近い問題に対する同定精度の向上を図っていく.なお,これらの成果については,国内関連学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「(ii)多次元スカラー波動方程式の境界値問題に対する直接的解法の開発」は計算時間の短縮を実現することができ,おおよそ研究計画通りに実施できた.一方,「(iv)多次元弾性波動方程式に対する開発手法の応用」については,より実用に近い設定において十分な精度で同定することができず,現在も同定精度向上に向けた研究を継続している.それに伴い,「(v)多次元粘弾性波動方程式に対する開発手法の応用」について,昨年度の成果を元にした研究を遂行することができなかった.以上の理由により,現在までの進捗状況として「(3) やや遅れている。」とした.
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今後の研究の推進方策 |
「(ii)多次元スカラー波動方程式の境界値問題に対する直接的解法の開発」については,cuBLAS,cuSPARSEなどのCUDAライブラリ使用による更なる高速化,より効果的な前処理技術の検討,そして,より収束性の高いGMRES法など別方法の導入について検討していく.「(iv)多次元弾性波動方程式に対する開発手法の応用」については,H2勾配法のパラメータ選択方法を再検討,および問題設定の見直しなどを行うことにより,実用により近い問題に対する同定精度の向上を図っていく.また,その成果を(v)の多次元粘弾性波動方程式について適用し,その有効性を示す.
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次年度使用額が生じた理由 |
対面で参加を予定していた学会が,新型コロナウイルス感染症の影響によりオンラインとなり,予定していた旅費の支出の必要が無くなったこと,そして研究課題に関する成果発表のための学会へ参加するため,次年度使用額が生じた.使用額については,5月31日から6月2日まで開催される「第28回計算工学講演会」へ参加するための旅費および参加費支出に充てる予定である.
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