令和5年度は,研究計画における「(ii)多次元スカラー波動方程式の境界値問題に対する直接的解法の開発」の令和4年度研究成果を国内関連学会で発表するとともに,開発手法が破綻する原因を明らかにし,それを回避するバニラ戦略を採用した「安定化GPBiCG法」を元にクロネッカー積安定化GPBiCG法を開発した.また,CUDAライブラリを用いたGPU並列計算プログラムを作成・実行し,数値実験により,破綻現象が発生しないだけではなく,収束性の大幅な改善およびさらなる高速化が実現できることを示した.今後は,弾性波動方程式族への適用などを実施し,後継課題実施に本開発手法を活用していく.さらに研究期間をとおして,研究計画における(i)から(iv)について一定の成果を得たとともに,(v)の粘弾性波動方程式の粘弾系係数同定問題に対する数値解法の共同研究を実施することで,手法開発の基礎を得ることができた.具体的には,1次元波動型方程式および多次元スカラー波動方程式の係数同定問題に対するH1型解法を開発し,数値実験により数値的に安定かつ一定精度で同定できることを示した.さらに多次元弾性波動方程式の係数同定問題に対して開発手法を適用することで,数値計算アルゴリズムを導出した.数値実験により数値的に安定な結果を得られることを示したものの,精度について十分な結果を得ることができなかった.また,当初目標とした粘弾性波動方程式に関する(v)および準ニュートン型解法開発を目的とした(vi)までは実施することができなかった.今後は,後継課題において残された目標の早急な達成を目指していく.
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