研究課題/領域番号 |
18K03422
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
新井 拓児 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20349830)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 数理ファイナンス / 確率論 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
本研究は、数理ファイナンスにおける金融派生証券に対する最適ヘッジ戦略に関するものである。具体的には、ジャンプ型確率ボラティリティーモデルの代表であるBarndorff-Nielsen and Shephardモデル(BNSモデル)に対し、代表的な最適ヘッジ戦略であるmean-variance hedging(MVH)の明示的表現を導出し、さらに高速フーリエ変換をベースとした数値計算法の開発を行うことを最終目標としている。 まず第一段階として、もう一つの最適ヘッジ戦略であるlocal risk-minimization(LRM)の数値計算法の研究を、平成30年度中に行う予定であった。私自身の先行研究で、BNSモデルがマルチンゲール性を持つ場合に対する数値計算法の提案は行ったが、一般の場合はできていなかった。これまでMalliavin解析を用いた研究を行ってきたが、これまでの方法では立ち行かなくなってしまった。そのため、Malliavin解析とは別のアプローチも考えてみることにした。 そこで今年度は、基本的なジャンプ型モデルのフレームワークである幾何Levyモデルに対し、ペイオフが指示関数で表現されるデジタルオプションを考え、LRMの数学的導出に成功した。とりわけ、指示関数はMalliavin微分が計算できないことから、Malliavin解析を用いることができない。そこで、伊藤解析を用いてLRMを導出することを試し成功した。現在、学術論文雑誌に投稿する準備を進めているところである。この成果をBNSモデルに対するLRMやMVHに関する研究に発展させていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題を始めるに当たり、主要な数学的手法としてLevy過程に対するMalliavin解析を考えていたが、この方法に限界を感じた。そこで他のアプローチによる研究も視野に入れ、指示関数で表現されるオプションに対する研究を行い、古典的な伊藤解析による研究を追加した。このため、少し進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、デジタルオプションの研究成果をBNSモデルへと発展させることを目指す。これは本研究課題の最終目標であるBNSモデルに対するMVHの研究へと繋がっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に出席するため、平成30年度中に2度の国外出張を行った。しかし、別の資金で賄うことができたため、平成30年度の使用額が少なくなった。平成31年度も2度以上の国際会議への出席を計画しており、その資金として有効に使用する予定である。
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