研究課題/領域番号 |
18K03425
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
富澤 貞男 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 教授 (50188778)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分割表解析 |
研究実績の概要 |
本年度は,具体的に得られた研究成果は主として次の点が上げられる: (1)順序カテゴリ正方分割表において,離散的な2変量対数正規分布型対称モデル,離散的な2変量t分布対称モデル,そして,離散的な2変量正規分布型対称モデルを提案した.各提案した離散モデルは,潜在的連続分布として対応する各2変量連続分布が仮定できるとき,良く適合するモデルである.また,シミュレーションと実データ解析において提案モデルの有用性を示した. (2)分割表解析は離散型多変量解析であるが,連続型多変量解析として,多変量密度関数に関して二重の対称性をもつ確率密度関数を提案し,二重対称確率密度関数の分解を与えた.具体的には準二重対称密度関数を提案し,二重対称密度関数が成り立つための必要十分条件は,準二重対称確率密度関数と周辺二重対称密度関数の両方が成り立つことである,という定理を与えた. (3)正方分割表において,ピアソン相関係数,ケンドール相関係数,スピアマン相関係数を用いて倹約な独立モデルが成り立つための必要十分条件を定理として与えた.また検定統計量の直交性も示した.そして実データ解析において,これらの定理の有用性を示した. (4)正方分割表において対称モデルからの隔たりを測る尺度を提案した.分割表の主対角セル確率を含む累積確率に基づく尺度である.そして実データ解析において提案尺度の有用性を示した. これらの研究成果は,従来の推定法や検定法などに加えて,モデルの提案,モデルの分解,尺度の提案などに基づく新しい分割表解析法を提案しており,本研究はこの分野へ大きな貢献をしていると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の研究目的は,(1)離散と連続の両方の多変量解析において一般的な対称性のモデルの提案と分解を考え,離散と連続の多変量解析の対称性の構造の融合を考えること.そして(2)離散と連続の融合した高次元の多変量解析法を構築することにある: 研究実績の概要のところで述べたように,(I)離散と連続の多変量解析における融合を潜在分布が2変量対数正規分布と2変量t分布で考え,さらに周辺の平均と分散がそれぞれ異なる2変量正規分布で考えたときに,実データに良く適合する離散型の対称モデルを提案した.また,(II)多変量密度関数に対しては対称性と点対称性を同時に扱った二重対称密度関数の概念を提案し,更にその分解を与えた.これは既に離散型(分割表解析)では既に本研究代表者が既に提案しており,本研究では離散と連続の融合が考えられたと言える.さらに(III)分割表で独立モデルを無相関と他のモデルへ分解可能であることを本研究で示したが,これも連続の多変量解析における独立性と無相関との関連性と密接なつながりがあり,本研究は離散と連続の融合に関する研究と言える.また,(IV)複数の論文を学術雑誌へ掲載し,さらに,現在,複数の論文を学術雑誌へ投稿中である.そして(V)研究成果を学会で発表した. 以上のように,本年度の研究は,「おおむね順調に進展している」といえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた研究成果をさらに発展させること.また,十分な研究成果が得られていないものについては目的達成に向けて取り組む予定である.具体的には,(1)多元分割表で種々の対称性モデルの提案と分解を与える.(2)多元分割表で種々の対称性のモデルに関する尺度の提案と分解を与える.(3)多変量確率密度関数における種々の対称性の概念を与える.(4)離散と連続の多変量解析における融合をいろいろな連続な潜在分布で考える.(5)多次元離散データを収集(または連続データで離散型のデータに直す)・文献調査する.(6)研究成果を論文にまとめ,学術雑誌へ投稿する.(7)学会,シンポジウム等で研究発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度は旅費の支出が予定より少なかったことと謝金の支出がなかったため. (使用計画) 次年度は,首都圏以外での学会が多いため旅費を多く使用する予定である.またデータ収集と解析のために解析補助者に対する謝金を必要とする.また,平成30年度と同様に平成31年度の研究を進める.そのためには,関連する図書を必要とする.また,データを収集するための依頼,打ち合わせをするための旅費,そして資料整理に対する謝金が必要である.またデータに統計モデルを当てはめ解析するために,計算機を使用するためのパソコン消耗品が必要である.また,本研究を達成するためには,統計モデルや尺度等を扱ったパソコン用統計ソフトを購入する必要がある.さらに,他の研究機関所属の研究者との通信,及び結果の学会,シンポジウムでの発表,学術雑誌への公開のために,それぞれ通信費,交通費,研究発表旅費,消耗品(論文の別刷り,文房具など)が必要である.
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