本研究課題の目的は,非線形発展方程式の解に現れる爆発現象の解明にある.解の爆発とは,時間発展する解が時間大域的には存在せず,有限時刻で特異性を発生する現象である.様々な方程式に現れる爆発解に対して多様な解析が行われているが,それらの中に複雑な爆発レートを持つ解(以下タイプ2の爆発解)の存在が指摘されているものがしばしば見受けられる.このような複雑な爆発レートを持つ爆発解を,統一的に数値計算によって捕まえることはかなりの困難を伴った問題である.このような数値手法の開発と,いくつかの具体的な問題に対してその爆発解の特異性の発生の様相,特に爆発解の爆発レートの解明に向けた理論研究を行なった.研究期間中の具体的な成果は以下である: 1.方程式のもつスケール変換不変性を用いたリスケーリング・アルゴリズムと呼ばれる爆発解の数値計算方法を利用して,爆発解の爆発レートを数値的に推定する方法を提案し,その改良・応用範囲の拡大に関する研究を行なった.2.1の手法を,法線方向速度がその曲率の冪乗(p乗)に比例して運動する平面曲線の運動(以下曲率流と呼ぶ)・面積保存の曲率流・周長保存の曲率流を記述する偏微分方程式に適用して数値実験を行なった(2018年度,2019年度).3.曲率流をリスケールした方程式の進行波解の漸近挙動に対する理論解析.この解は,曲率流のタイプ2の爆発階の特異性の解明のために基本的な道具となるのだが,その様相が指数pに応じて著しく異なることを見出した(2020年度,2021年度).4.3の進行波を用いて,指数pが0.5から1の場合の曲率流の爆発解の上からの評価を与えた(2021年度,2022年度). 2022年度には上記3の結果が出版され,4の結果を投稿した.
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