研究課題/領域番号 |
18K03428
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
橋口 博樹 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (50266920)
|
研究分担者 |
岩下 登志也 東京理科大学, 理工学部教養, 准教授 (20266919)
中川 重和 岡山理科大学, 総合情報学部, 教授 (90248203)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 多変量解析 / ゾーナル多項式 / 超幾何関数 / 特異ランダム行列 / 固有値 |
研究実績の概要 |
本研究は,次の4つのテーマからなる.[テーマ 1] 多変量分布論で必要となる群作用で不変な多項式,特殊関数の統一化. [テーマ 2] 非特異行列変量の分布論から特異な場合への展開.[テーマ 3] 多変量正規母集団からの頑健性を目指した発展.[テーマ 4] 量子化への展開.これらのテーマ1から4は,各々が独立しているものではなく,連携し共通部分も多くある.テーマ2で当初計画として挙げていた「スティーフェル多様体上の積分で不変な多項式の存在証明」について,テーマ1,4とも合わせて存在証明に成功した.これの証明ができたことにより,特異ウィシャート行列の固有値の正確分布論が,非特異と同様に完成した.現在,テーマ2をベースとしたテーマ1,4の研究に関する2本の論文を学術アーカイブとして公開しており,海外学術雑誌へも投稿中である.これでテーマ2の問題を解決したことになるが,テーマ1にも関連して新しい超幾何関数を導入することができている.またテーマ1に関して標本相関係数の正確分布の新しい計算方法が確立する目的で,サンプルサイズに関する漸化式の導出をすることができた.本成果は学術論文としてアクセプトされている.さらにこれをテーマ3へつなげるべく,共同研究者の中川氏とも議論中であり,来年度中には成果がだせるような状況になってきた.テーマ2のテーマ3への拡張も共同研究者の岩下氏,連携研究者とともに発展できる状況になっており,今年5月の学会で発表を行うことになっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4つのテーマからなる.[テーマ 1] 多変量分布論で必要となる群作用で不変な多項式,特殊関数の統一化. [テーマ 2] 非特異行列変量の分布論から特異な場合への展開.[テーマ 3] 多変量正規母集団からの頑健性を目指した発展.[テーマ 4] 量子化への展開.当初計画していた研究内容については,テーマ2,3はほぼ計画を達成できており,テーマ2では投稿中論文の評価を待っている段階にある.最初の投稿でエディタからは,応用をつけるようにとのコメントがあり,実データの解析を含めた状況で再投稿を行なった.またテーマ3についても前年度に2本の論文の投稿とアクセプト,テーマ2の内容まで踏み込んだ成果について現在準備中となっている.5月にオンラインでの学会発表が予定されていて研究成果発表し,その後に論文を投稿予定である.部分的に数値計算を進めており,今後により多くの数値実験をする予定である.テーマ1および4についても,テーマ2を主軸として発展ができたことで,これも当初予定以上に順調に進んでいる.特にテーマ2の枠組みでテーマ1に関連した非斉次型行列変量の超幾何関数を導入できている.この特殊関数によりテーマ2で実際に特異ウィシャート行列の固有値分布論が非特異と同じように展開できたことは良い成果になったと考えている.またこの特殊関数はテーマ3での拡張にも成功している.さらに,これらはテーマ4に関連した四元数,八元数といった量子化での統一化も部分的にできている.以上のことから,極めて順調に進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は,[テーマ 1] 多変量分布論で必要となる群作用で不変な多項式,特殊関数の統一化,[テーマ 2] 非特異行列変量の分布論から特異な場合への展開,[テーマ 3] 多変量正規母集団からの頑健性を目指した発展,[テーマ 4] 量子化への展開である. テーマ1は,テーマ2,3,4のすべてに関わることであり,2,3,4の個別に進めて,最終的にテーマ1で統一化を図ることも検討しており,2と3が計画どおりすすんでおり,また,発展もできている状況にある.最終年度はどの程度発展させられるかを考えていきたい.テーマ2では,今年度に正確分布に必要な新たな超幾何関数を導入しその性質を調べ,実際の数値計算ができたので,最終年度にテーマ1,4の内容に踏み込んでより発展させていく予定である.テーマ3については,これまでに成果もあがり概ね当初計画を達成している.共同研究者や研究協力者との議論から,さらなる発展が見込めることが分かっており,5月の段階で研究発表,7月くらいまでに論文投稿へともっていきたい.今年度にテーマ4について,テーマ2を応用できるかを検討し,実際にうまくいった.これらもより発展できるか最終年度に検討し,分担者や研究協力者との議論を重ね数値実験や論文投稿をおこなっていきたい.最終年度はコロナウィルスの影響で,国内外の学会での成果発表が難しくなってきており,学術アーカイブを利用して成果を早期に公開することなどを積極的に取り入れていきたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度に香港での学会で3件の発表を予定し,海外旅費として一部使用する予定であったが暴動により学会が中止になった.また,共同研究者の岩下氏も参加予定していた海外での学会が中止になり,渡航ができなくなった.次年度に成果発表の旅費として有効に利用する.
|